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2019.7.1

療育〜個人に適した発達支援、多様な手法、実践の基本〜(2)

<「療育」とは子供の成長に合わせた発達支援>

療育と一口に言っても、用いられる方法は多様です。代表的なものはTEACCH、ABA、PECS、感覚統合法、RDI、ビジョントレーニングなどです。

現在は多様な療育方法が現場で実践されていますが、これらはどれかひとつの方法を用いればよいというものではありません。子供たちの状態に合わせ、様々な療育方法を適切に組み合わせることで、より効果的な療育を行うことができるのです。

下記では、それぞれの療育方法について簡単に説明していきます。

 

●PECS(ペクス)-絵カードを使いながらコミュニケーションを学ぶ-

PECS(Picture Exchange Communication System:絵カード交換式コミュニケーションシステム)とは、イラストの描かれたカードを使って、子供が自発的なコミュニケーションを行うことを目的とした療育方法です。

PECSは、子供が絵カードを支援者に手渡しするところからはじまり、全部で六つの段階で構成されています。

はじめは絵カードを介した自発的なコミュニケーションを促します。絵カードの認識や区別を学んだうえで、その後は文章や言葉を用いて自身の要求を伝えられるように進めます。最終的には、支援者の質問に答え、自発的なコメントができるようになることが目標です。
【参考】https://pecs-japan.com/

 

◆段階1
欲しいものや望んでいる行動のためには、一枚の絵カードを支援者に手渡す必要があることを学びながら、コミュニケーションの仕方を覚えていきます。

◆段階2
段階1で用いた絵カードを使いながら、段階1とは異なる相手や場所でも同様のコミュニケーションができるようにします。つまり、特定のコミュニケーションを「汎化」させていく、ということです。

◆段階3
複数枚の絵カードのなかから、自分が求めているものを支援者に要求するための適切なカードを選べるようにします。絵カードの選択を通じて、それぞれの絵カードの認識や区別を学びます。

◆段階4
欲しいものが描かれた絵カードと「ください」と書かれたカードを横に並べ、簡単な文の構成を学びます。「ください」カードをあらかじめ並べておくことから始め、次第に欲しいものの絵カードと「ください」と書かれたカードの両方を子供が並べられるようにします。

◆段階5
「なにが欲しいの?」などの簡単な質問をして、子供がPECSを使ってこれに答えられるようにしていきます。絵カードを使いながら、質問に応答できるようになることを目指します。

◆段階6
「なにが見える?」「なにが聞こえる?」などの質問に、「見えます」「聞こえます」などの述語カードを使って答えることで、文を構成する力を身につけます。最終的には、自発的にコメントするようになることが目標です。

 

●感覚統合療法-正しい身体の動かし方を身につける-

感覚統合法(Sensory Integration Therapy)とは、感覚刺激を与え、正しい適応反応を引き出すことを目的とした療育方法です。自閉症スペクトラム障害を抱える子供たちが見せる手先の不器用さや身体の動かし方のぎこちなさを軽減することを目指します。

私たちの身体が適切な反応をとるためには、受け取った感覚刺激が脳で正しく処理されていなければなりません。このプロセスが正しく機能していないと、感覚過敏や感覚鈍麻、身体の動かし方の不器用さや不安定さに繋がっていきます。

感覚統合法では、このプロセスを調節し、正しい反応を引き出していきます。ブランコやスクーターボード、吊り下げ遊具などを用いて、前庭覚(バランスをとる感覚)や固有覚(身体の位置や動きを理解する感覚)に感覚刺激を与え、子供の反応を観察したうえで、作業療法士が支援を行います。

 

●ビジョントレーニング-ものを正しく「見る」ためのトレーニング-

ビジョントレーニングは、目の正しい動かし方を学ぶための療育方法です。

視力は正常でも、目の動かし方に問題があるために、運動や学業で問題が生じる場合があります。例えば、目をうまく動かせないと、ボールをうまくキャッチできなかったり、文字を追えずに本が読めなかったりするのです。

こうした問題の影響を軽減するため、ビジョントレーニングでは見るべきものを正確に脳で捉える練習をします。「見る」ことに関する専門家である「オプトメトリスト」が支援を行います。

 

●RDI-子供の対人関係を家族でサポートする-

RDI(Relationship Development Intervention:対人関係発達指導法)は、家族とのコミュニケーションを通じて、自閉症スペクトラム障害を抱える子供が他人との関係性に関心を持てるようになることを目的としています。

RDIの大きな特徴は、自閉症スペクトラム障害を抱えた子供だけでなく、その家族をも療育の対象にしていることです。日常生活をベースとしたアクティビティを通じて、ご家族による子供の発達促進を支援するのがRDIの手法です。

子供が前向きに他人との関わりを考えられるよう、親がそのガイド役となって、RDI認定コンサルタントなどの支援や指導を受けながら、対人関係の築き方を子供に学ばせていきます。

 

<子供のやる気や達成感をうまく引き出す>

上記のように、療育にはその目的に応じて様々な方法があります。ただ、どのような方法を用いるにせよ、療育に共通して大切なことは、子供の積極性や達成感をいかにして引き出すのか、ということです。

嫌がる子供への無理強いは禁物です。支援を行う側が、子供たちが療育に参加しやすい環境を整えてあげましょう。

 

●療育の基本サイクル-指示する→実行する→褒める-

療育においては、「指示する」→「実行する」→「褒める」というサイクルをきちんと確立することが重要です。「褒める」が「叱る」に代わってはいけません。褒められれば子供も療育を前向きに考えてくれますが、叱られ続ければ、子供は療育に参加することを嫌がるようになるかもしれません。

どうしてもうまくいかない場合でも、焦ってはいけません。「指示や手段が本当に適切か」「一度に複数の指示を出していないか」など、子供の状況に合わせた環境作りができているのかをもう一度確認しましょう。

 

●「指示」は細かく、分かりやすくが基本

自閉症スペクトラム障害を抱えた子供は、相手の意図や隠された意味を汲み取ることが苦手なため、曖昧な指示は控えましょう。指示は分かりやすく、細かく、しかも単純な内容であることが理想的です。

子供が指示通りに実行できないという場面を、できるだけ少なくしてあげることも大切です。失敗は自信の喪失に繋がり、療育への取組み意欲にも影響します。イラストや文字を用いて視覚的に説明したり、初めのうちは手伝ってあげたり、子供が指示の実行に成功しやすい環境を作ってあげましょう。

 

●褒めていることが子供にきちんと伝わっているか

成功したときは、必ず子供を褒めてあげます。褒められることが自尊心の確立を助け、延いては療育に対する積極性にも繋がります。

しかし、カナー型自閉症の子供たちは「褒められる」ということの意味をそもそも理解できてない場合があります。褒めることは大切ですが、「褒められた」という理解が子供に生まれていなければ意味がありません。褒められているのだということを子供が理解できる状況を作ってあげることが療育の基本です。

子供が理解しているかを確認するために、子供の表情を丹念に観察しましょう。表情が少しでも明るくなるような場合には、子供は褒められたことを理解していると言えます。

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