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2019.8.12

ソーシャルスキル・トレーニング(SST)〜理論〜

<ソーシャルスキルを構成する四つの要素>

適切な対人行動は、いくつかの技能を構成する要素の組み合わせによって決まります。そうした構成要素には、送信行動、受信行動、相互作用的行動、状況因子などがあります。

①送信行動
・言語的行動  (言葉の内容)
・言語随伴的行動(声量、会話速度、声の高低、声の抑揚)
・非言語的行動 (視線の合わせ方、姿勢、顔の表情、対人距離、身振り動作)

②受信行動(社会的知覚)
・関連する手がかりへ注意を向け、分析し、意味を理解する
・感情の認知

③相互作用的行動
・反応のタイミング
・相手に同意したりや褒めたりする
・交互にやりとりしあう

④状況因子
・社会的な慣習、個々の状況のおける必要な事柄の知識

※参考:『わかりやすいSSTステップガイド(上巻)』,A・S・ベラック、スーザン・ギンガリッチほか,2000年:p.11

 

●送信行動-言語的行動、言語随伴的行動、非言語的行動-

送信行動には、言語的行動、言語随伴的行動、非言語的行動という大別して三つのタイプがあります。

・言語的行動
発言の言い回し、用いる単語の数や種類、発言の内容などが言語的行動に含まれます。ソーシャルスキルが高いということは、聞き手の状況や理解力に配慮した、相手が理解しやすい言葉遣いや言い回しなどができる、ということを意味しています。

・言語随伴的行動
言語随伴的行動とは、発言する際の声の特徴のことで、発言の速度や声の大きさ、声の抑揚などが含まれます。これらは会話における感情やその変化を表現します。

抑揚がなく小さな声は発言する人の退屈さや疲労を表したり、弾むような声や早い調子の発言はその人の高揚や興奮を表したりします。そうした意味で、言語随伴的行動は、発言の意味や相手の意図を汲みとるうえで非常に重要になります。

・非言語的行動
非言語的行動には、顔の表情や視線、体の姿勢など含まれます。表情は、会話する相手の感情を理解するうえで非常に大切で、微笑みやしかめ面、頬の紅潮などは発話した人の心のあり様を映しだしていると言えます。

「目は口ほどにものを言う」ということわざがあるように、視線もまた話し手の感情を理解する大きな手掛かりとなるものです。「視線がよく合っている」ことは、相手への誠実さや怒りなどを表していると考えられ、また「視線の交錯を避ける」ことは、不安や恐怖などの表れだとされています。

発話の際の姿勢もまた、本人の感情によって大きく変化します。前屈みなのか、状態を反らしているのかによっても、相手の心理を推察することができます。また、対話の際の距離感も非言語的行動に含まれており、触れ合うほどに近い距離は互いの親密さの表れであり、逆に距離が開いていれば相手への不信感の表れだと解釈できます。

 

●適切な発信行動は対人行動の基本

それぞれの行動自体も大切ですが、発信行動は上記のような行動の組み合わせによって相手に与える印象や影響、効果が決まります。各要素の適切な組み合わせ方を知ることで、話し手は自らの発話の内容を正しく相手に伝達することができるのです。

自分が望む情報を相手に正しく伝える手段を身に付けることは対人関係の基本であり、それゆえにソーシャルスキル・トレーニングの基礎となります。

 

●受信行動-注意、分析、知識の組み合わせとしての社会的知覚-

発信行動における適切な組み合わせのパターンを持っていたとしても、対人状況を正しく理解することができなければ、適切な対人行動をとることはできません。相手の状況に注意を向けて分析し、いつ、どこで、どんなふうに反応行動を組み立てればいいのかをきちんと理解することがソーシャルスキルの向上には不可欠です。

こうした注意、分析、知識の組み合わせは、専門的には「社会的知覚(social perception)」と呼ばれています。社会的知覚をうまく行うためには、相手の表情や声音、姿勢などの変化を伴う会話の内容をさまざまな手掛かりから適切に読みとらなければなりません。

 

●相手の状況や変化を識別するにはさまざまな能力が必要

手掛かりを正しく識別するためには、相手の状況や変化を見極める注意力はもちろん、相手の感情を推察する想像力や、過去の経験と現状とを照合する力など、さまざまな能力が求められます。

自閉症スペクトラム障害のある人は、相手の感情を理解することを苦手としています。これはすなわち、社会的知覚が苦手ということを意味します。相手の状況に注意を向け、適切に情報を収集することができなかったり、得られた情報から適切な感情を推察する能力や経験に乏しかったりする場合があるのです。

 

●適切な対人行動は多様なため、「行動レパートリー」を増やすことが重要

ソーシャルスキルとは、構成要素となる個々の行動を適切に組み合わせ、効果的に使用することができる技能です。どのような対人行動が適切なのかは、状況によって異なります。状況に応じて、求められる行動もまた変化します。つまり、行動の組み合わせは実に多様なのです。

状況によっては、対応に熟練が必要になる場合もあります。高圧的な営業マンとの商談には虚勢やはったりが求められる場合がありますし、就職面接では普段の会話とは異なる礼儀が必要な場合もあります。こうした個々に区別されるような行動の組み合わせは、専門的に「行動レパートリー」と呼ばれます。

ソーシャルスキル・トレーニング(社会生活技能訓練:SST)では、こうした「行動レパートリー」を増やし、対人行動を適切に行えるようにすることが目的です。利用者の具体的なニーズや個々の状況に合わせ、トレーニングを進めていきます。

 

●会話技能(言語的技能)

会話は、ほとんどすべての対人関係において中心となるやりとりで、コミュニケーションの基本的な手段です。会話の技能とは、会話の「開始」、「維持」、「終了」における各技能で、言語的なものと非言語的なものに大別されます。

言語的技能の会話の「開始」と「終了」に関しては、必要となる発話の行動レパートリーはそこまで多く必要ありません。しかし、会話をうまく「維持」していくには、複雑な技能の組み合わせが必要になる場合が多くなります。というのも、会話を円滑に進めるには、相手の反応を伺ったり、相槌を入れて会話を促したり、情報を得るために適切な質問をしたりすることが求められるからです。

 

●会話技能(非言語的技能)

非言語的技能については、視線を適度に合わせたり、普通の声量で抑揚をつけて話したりすることが、会話を円滑に進めるためには必要になります。視線を合わせすぎたり、全く視線を合わせないのも不適当ですし、発話の調子が平板すぎたり、声が大きすぎたり小さすぎるのも適切とは言えません。

こうした会話技能は、その要素のどれもが極めて重要です。どれか一つが欠けているだけでも、相手に与える印象に悪影響を及ぼす可能性があるからです。これらの要素のすべてを問題なく、しかも適切に組み合わせることで、会話は滞りなく続けることができるのです。

 

●社会的知覚技能

相手との会話をうまく行うためには、会話技能に加えて、注意・分析・知識の組み合わせである社会的知覚に関する技能も重要になります。社会的知覚技能に関して、重要なポイントは下記のようなものです。

・相手の話を注意深く聞くこと
適切な応答をするのに必要な情報をきちんと受け取る。

・会話の内容を明確化すること
発話内容が不明瞭な場合、会話に混乱をきたさないよう内容をはっきりさせる。

・発話が会話に関連性を持っていること
会話全体の流れに対して関連性のある応答をする。自閉症スペクトラム障害のある人は、自分の興味がある分野の話題を優先させてしまうこともあるため、自分の発言がそれまでの会話内容と関連性があるかどうかは注意しましょう。

・適切なタイミングで発話すること
会話に割り込んだり、返答の間を置きすぎたり、突然会話の席から離れたりすることは、社会的なルールに反する場合が多いです。ただ、適切なタイミングというものは、会話の内容や社会的な規範によって異なりますので、社会的なルールに関しての知識をきちんと持っておくことがまずは必要になります。

・相手の感情を正しく認識すること
適切な返答を行うには、相手の感情を正しく理解することも重要になります。そのためには、言語的および非言語的な細かな手掛かりを適切に読み取り、分析することが必要です。自閉症スペクトラム障害のある人は、自分を相手の立場に置き換えたり、感情を推測したりすることを苦手とする場合が多いため、相手の感情を認識する訓練はとりわけ重要になります。

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