ソーシャルスキルの評価方法 | ソーシャルスキルトレーニングVR

2019.08.12

自閉スペクトラム症と一口に言っても、その状況は人それぞれ異なります。広い範囲でさまざまな困難があらわれる場合もあれば、一部の技能を少しだけ苦手としているという場合もあります。 困難の程度が一様でないのであれば、ソーシャルスキル・トレーニング(SST)のやり方も参加者の状況によって変えていくべきです。その人に適した訓練を行っていくという意味で、まずは事前にその人の特性や状況を適切に評価(アセスメント)することが必要になります。評価の方法はさまざまですが、一例を紹介します。   たとえば、まずは四つの質問から考えます。 ①その人は、人付き合いで何か不都合なことがあるか? ②不都合が起こる場合、それはどのような状況で起こるのか? ③不都合が起こる原因はなにか? ④どんなソーシャルスキルに課題があるか? これらの質問は、上記の通りの決まった順番で行います。①の漠然とした質問から、徐々に④の具体的な質問へと移っていきます。順序に沿って、前の質問の返答次第で、次の質問に進むのかどうかが決まります。 例えば、①でなにか不都合なことがあった場合、②でどんな状況下でその問題が起こるのかを考えます。学校や職場では問題が起こるのに、家庭では問題が起きないのだとすれば、③で不都合がソーシャルスキルの有無によって起こるものなのか、それとも学校や職場の環境がストレスになって起きているのかなどを考えます。つまり、実際に不都合の原因となっているものを特定していくのです。そしてソーシャルスキルが不都合を引き起こしていると考えられる場合には、④で具体的にどのような技能が必要なのかを考えていきます。   まずは、その人の状況に関する大まかな情報を集めることから始めます。日常生活の対人関係において、なにか不都合があるのかどうかを本人や家族、その他本人と密接な関係にある人たちと面接したり、面接以外の場で本人を注意深く観察したりすることで、全体的な情報を集めます。 たとえば、コミュニケーションが苦手で会話ができないなどの理由から、日常生活の広範囲にわたって困難がある場合には、この質問に答えるのは難しくはありません。しかし、会話が得意で高いソーシャルスキルを有している人の場合は、不都合が起こる場面が限定的なため、それを把握するのが難しくなるので、慎重に情報を集めることが大切です。   ソーシャルスキルは状況に応じて具体的なものです。同じ行動でも、場面によってそれが適切な場合もありますし、そうでない場合もあります。ある人にとっては適切でも、別の人にとっては適切ではないということもあります。 状況に応じて求められる技能は多様で具体的です。対人状況に不都合があるといっても、それがいつ、どんな場面で、どのような相手と起こる問題なのかを具体的に把握することが重要になります。   障害のある人が対人関係において困難に直面する場合、必ずしもソーシャルスキルが原因となっているわけではありません。人付き合いへの不安や過去の対人関係の失敗などが、適切なソーシャルスキルの実践を妨げている場合もあります。 SSTをより効果的なものにするためには、行われる訓練がその人にとって適切なものでなければなりません。ですから、不都合の原因が本当にソーシャルスキルにあるのか、それともほかの要因によって引き起こされているのかを確認する必要があるのです。   面接は非常に有効的な評価技法の一つです。対人関係の経歴や観察に基づく様々な情報、重要な関係者の見解などを得ることができ、社会生活においてその人が苦手としているソーシャルスキルについて考える際の手助けとなります。 対人関係の経歴は、ソーシャルスキルの評価において非常に重要です。その人の社会生活における関心や満足度などの情報を、現在や過去を振り返ってもらうことで明らかにしていきます。とりわけ、「いつ」「どこで」「誰と」「どんな事情のもとで」不都合なことが起こってしまったのかを本人から具体的に聞くことは、SSTを進めていくうえで大切な情報となります。 また、面接それ自体が対人的なやりとりですから、その場における観察からも貴重な情報を得ることができます。とくに、表情、身振り手振り、目の動きなど、注意深く観察して情報を集めましょう。   ソーシャルスキルの評価にあたっては、その人自身の目標を設定することも大切です。設定する目標と課題となるソーシャルスキルがどのように関連しているのかを明らかにすることで、学習に対する意欲が高まります。

とはいえ、設定する目標が高すぎると、学習の成果を感じづらくなり、かえってモチベーションを下げることにもつながりかねません。ですから、高い目標の場合には、目標までの道のりを細かいステップに分けて示してあげることが重要になります。目標の達成に近づいていることが実感できるようになると、SSTへの参加により積極的になってもらえるはずです。

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