【発達障がい支援】高機能自閉症とは?他の発達障害との違いは? | ソーシャルスキルトレーニングVR

2021.07.03

発達障害の一種である高機能自閉症は、近年研究が進むにつれてアスペルガー症候群との差異が小さいことから、同一の症状として扱われることが多くなってきました。現在はどちらも自閉症スペクトラムの一症状として診断する動きも出てきています。

実際にこれらの発達障害には違いがないのでしょうか。それを検証するために、この記事では高機能自閉症の概要から、その特徴と対策までを解説します。

高機能自閉症とは?

「高機能自閉症(HFA:High Functioning Autism)」とは、知的発達の遅れを伴わない状態で、コミュニケーションをとることが苦手だったり、言語発達に遅れが見られたりする症状です。通常は3歳くらいまでに発症し、中枢神経に何らかの機能不全があることが原因と考えられています。

高機能自閉症の症状は自閉症とほぼ同じで、高機能とは能力的なレベルではなく、あくまでも知的発達に遅れがないことを意味する表現です。一般的にはIQ70以上が基準といわれ、幼児期のみならず成人してからも症状が続く場合があります。

高機能自閉症の特徴

文部科学省は、高機能自閉症の判断基準と特徴についても詳しく説明しています。ここでわかりやすい表現にしてまとめておきます。

知的発達の遅れは見られない>

全般的に知能の発達は正常で、人によっては健常者よりも高い知能指数を示すこともあります。

コミュニケーションの形成が苦手

相手の気持ちを推測することや、その場の雰囲気を読み取ることが苦手なため、同年齢の仲間と交友関係を築くことができません。特に冗談を真に受けてしまうなど、相手の言葉を字義どおりにしか解釈できなかったり、自分が思ったことをそのまま言葉にしてしまったりする傾向があります。

言語能力に発達の遅れがある

話し言葉に遅れが見られ、相手との会話が継続できないケースも多く見られます。発症は幼児期であり、言葉以外に身振りなどのコミュニケーション能力に欠けている場合もあります。ただし症状は成長するにつれて目立たなくなり、一般的レベルで言葉を扱うことができるようになります。

特定の物事に強くこだわる

限定された対象に強い興味を抱く傾向があり、特定の手順や規則性のある物事を好みます。また自分が決めた行動パターンにこだわり、それを変えられることには強い抵抗感を表します。

この他にも視覚・聴覚・触覚などの感覚に異常があったり、運動能力に異常があったりするケースも見られます。基本的に知的発達の点以外は、自閉症の症状と同じと考えてもよいでしょう。

自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群との違い

発達障害の診断基準では、世界保健機関(WHO)の「ICD-10」と、アメリカ精神医学会の「DSM-5」がよく知られています。ここでは主にDSM-5の考え方をもとに、高機能自閉症と他の発達障害とを比較してみます。

アスペルガー症候群との違い

高機能自閉症とよく似た症状に、「アスペルガー症候群(AS:Asperger Syndrome)」があります。特徴としてはどちらもほぼ一緒で、アスペルガー症候群の方には言語能力の遅れがないことが、唯一の違いとして認識されてきました。

しかし最近の研究によると、高機能自閉症に見られる言語能力の遅れは、年齢とともに解消されてゆき、アスペルガー症候群との区別はほぼなくなるといわれています。その結果、2つの症状を同一のものとみなすケースが多くなっています。

自閉症スペクトラムとの違い

アメリカ精神医学会の「DSM-4」が「DSM-5」に改訂されるにあたって、アスペルガー症候群は「自閉症スペクトラム(ASD:Autism Spectrum Disorder)」に統一されました。つまり高機能自閉症も、自閉症スペクトラムに統合されたわけです。

その他に自閉性障害・小児期崩壊性障害・特定不能の広汎性発達障害の3つも、自閉症スペクトラムに統合されました。今後は高機能自閉症を含めて、これらの症状は自閉症スペクトラムとして扱われることになるでしょう。

高機能自閉症への対策

高機能自閉症は診断が難しく、いわゆるグレーゾーンの場合、まわりの人々が障害と気づかないこともあります。本人だけが悩みを抱えてストレスが蓄積する状態になり、二次的なトラブルにつながってしまうこともあります。

そこで最も重要になるのが、周囲の人々の理解が得られるかどうかです。高機能自閉症が疑われる場合は、本人はなるべく早く専門家に相談することと、周囲の人々の理解を得られるように務めることが必要です。本人が難しいときは、サポート機関に支援してもらうことも考えたほうがよいでしょう。

周囲の理解とサポートが改善のカギ

高機能自閉症に対する周囲の理解が得られないと、単に本人の個性や、やる気のなさに結びつけられてしまう可能性があります。これは自閉症スペクトラム全般についていえることですが、周囲が発達障害の1つとして理解することが何よりも重要です。そのうえで適切なサポート体制が構築できれば、症状の改善につながるかもしれません。

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