ライフステージごとの支援のポイント〜思春期(中学校・高校)①〜 | ソーシャルスキルトレーニングVR

2019.07.20

pixta_24470915_s-1781454 自閉スペクトラム症がもたらす困難は、子供から大人まで問題の現れ方は様々でも、大きな三つの特徴によって引き起こされるものです。こちらでは、それぞれのライフステージにおいて、自閉スペクトラム症と向き合うためのポイントをご紹介していきたいと思います。 本人や保護者を取り巻く環境がどのように変わり、それぞれにどのような選択肢があるのか、親御さんや保護者などの周囲の人たちはどのように関わっていけばいいのかを、ライフステージごとに細かく見ていきましょう。   中学校や高校における学生生活は、教科ごとに先生や教室が変わったり、持ち物の管理も複雑になったり、部活動が始まったりと、これまた小学校とは大きく変わるところが多くあります。子供たち本人に任される部分も増えることで、自閉スペクトラム症を抱えた子供たちのなかには混乱してしまう子供も少なくありません。 そうした環境の変化のなかで、子供たちの意思や判断を尊重し、自分でなにかに挑戦する機会を意図的に作っていくことが大切になってきます。   中学校以降の進路は、子供自身の気持ちや希望をできるだけ尊重するようにしましょう。もちろん子供に丸投げするということではなく、家族や保護者が子供と一緒になって考えていくことが重要です。 小学校を振り返り、今後はどうしていきたいのかを子供とよく話し合い、子供の気持ちをきちんと確認してから進路を決めるようにしましょう。学校生活が辛かったとしても、それを我慢してしまったり、うまく言葉で伝えられなかったりする場合もあります。子供の様子を注意深く観察し、必要ならば先生や療育スタッフ、医師に相談してみるといいでしょう。   精神が比較的に不安定な思春期には、うつ病や不登校などの二次障害が起こりやすい時期でもあります。とりわけ二次障害の原因になりやすいのが「いじめ」です。 誰にも相談できず、自分で抱え込んでしまう子供も多いため、日頃から家族や保護者が子供を注意深く見守り、できるだけ早く問題に気付くことが大切です。また、家庭だけで悩まずに、先生や医師、保健所の児童発達相談など関係機関に相談してみましょう。 自閉スペクトラム症を抱えた子供たちは、障害の特性から困難にぶつかることも多く、周囲の理解を得られずに孤独になってしまう場合があります。子供が本人なりに頑張ってみても、どうにもうまくいかないこともあるでしょう。学校における友好関係をうまく築けなかったり、勉強についていけなくなったりすることで、大きなストレスを抱えてしまうこともあります。   「努力しても報われない」「どうにもうまくいかない」「失敗ばかりしてしまう」。こうした心の傷が積み重なることで、自分はダメな人間なんだと自らを責めるようになり、子供は自信や自尊心を失ってしまいます。 こうした自信の喪失が原因となって、下記のような二次的な問題を引き起こしてしまうことを「二次障害」と呼びます。周囲の理解が進んでいないと、二次障害の症状を「わがまま」「わざとやっている」などの身勝手と受け止められ、問題が更に深刻化する場合もありますので注意が必要です。   ・身体的な不調(頭痛、不眠、食欲不振など) ・精神的な不調(過剰な不安や緊張、うつ病、不登校、引きこもりなど) ・問題行動  (暴言、暴力、非行など)   学校生活における二次障害の代表例が不登校です。周囲の理解が得られず、学校生活に生きづらさを感じることで精神的な不調に陥り、学校に行けなくなってしまう子供たちは多くいます。いじめが原因になっている場合もあります。 学校生活に問題を抱えている以上、先生を含めた学校関係者との話し合いは不可欠です。しかし、教員による行き過ぎた指導が不登校の原因となっている場合もあることには注意が必要です。自閉スペクトラム症の特性や子供の行動をよく理解していないために、指導を受け入れない子供ばかりに原因を求める教員もなかにはいます。じっくりと時間をかけて相互の理解を作っていくことが大切です。   インターネット環境が発展してきたこともあり、ネット依存症の問題が注目されています。自閉スペクトラム症を抱えた子供は、一度興味を持つとなかなか抜け出せなくなってしまうので、ネット利用の際には注意が必要です。 オンラインゲームやSNSなどのWebコンテンツにのめりこんでしまい生活リズムが乱れると、朝起きられなくなり、不登校につながる恐れがあります。利用時間は事前にきちんと決めておくこと、それでもやめられない場合には電源を切ってしまうなど物理的に対応することも、場合によっては必要になります。ただし、オンラインゲームなどがストレスを発散する唯一のツールになっていたり、SNSが本人の居場所になっていたりする場合も考えられます。一方的に禁止してしても、根本的な解決にならないことも多いので、慎重に対応してください。   不登校という問題は、無理に登校させても解決しません。まずは、不登校になった原因を特定し、それを取り除く必要があります。そして、失われた自尊心を取り戻し、自己肯定感を高めていかなければなりません。 例えば、コミュニケーションに自信がないことで集団になじめなかったり、学校生活に困難を感じたりしているのであれば、これに対応したSST(社会生活技能訓練:※詳しくは「SST」の項を参照)を活用し学校生活を無理なく過ごせるような知識や能力を身につけるのもひとつの方法です。   二次障害を予防するためには、家族や保護者が子供の特性にいち早く気付き、そして子供を理解することが不可欠です。子供の特性に気付けず、自閉スペクトラム症に特有の行動を叱ったり嘆いたりすることで、子供はストレスや恐れを感じ、さらなる二次障害を引き起こしてしまう危険もあります。 子供の特性を理解し、それに対応した接し方や育て方をすることがとても大事になります。延いてはそれを周囲にも広めて理解を求めることで、子供がストレスなく生きやすい環境を作っていくことが重要です。   学校生活における失敗や生きづらさは、子供の自信を奪います。すると、子供はストレスや不安を掻き立てられ、二次障害に繋がってしまうのです。 子供が自分のことを好きになり大切にできるような対応をしましょう。子供が自分自身を認められる感覚、つまり自己肯定感を高めることが、なによりも二次障害の予防には必要なのです。   失敗してしまったとしても、それを責めたり叱ったりしてはいけません。「失敗しても大丈夫だよ」「よく頑張ったね」「次は頑張ろう」と声をかけ、努力を認めること、「失敗しても次に頑張ればいいんだ」という安心感を子供に与えるように心掛けてください。 「自分は大切にされている」という実感を子供が持てるようにすることが非常に大切です。その実感が子供の自己肯定感を育み、自分に自信が持てるようになるのです。

このような感覚を持っていれば、失敗や挫折を経験しても、簡単には挫けない強い心を子供は持てるようになります。そして、そうした自信や強い心を持つことで、たとえ自閉スペクトラム症を抱えていても、子供は二次障害には陥らず、困難に立ち向かうことができるようになるのです。

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