2021.02.22
身体の各部位を、脳が正確にコントロールする機能を協調運動と呼びます。協調運動はさらに、粗大運動と微細運動との2つに分けられます。どちらが欠けていても、身体をスムーズに動かすことが難しくなります。 今回は、微細運動について、支援者側の対応方法を解説します。 微細運動とは、手や指を使った精密な動作のことで、具体的には文字を書くことや箸を使ったりボタンをはめたりするなど、日常的な手指のコントロールに現れる動きです。対して、身体の根幹的な基本動作のことを粗大運動といいます。 粗大運動がほとんどの動物に共通の機能である一方、微細運動は人間において特に発達した機能で、さらに高度な脳と身体との連携が求められます。微細運動も小さい頃から成長するに従って、徐々に獲得してゆく機能であり、十分に発達しないと学校生活や社会の中で問題が生じる可能性があります。 微細運動は脳の働きと密接に関わっているとされますが、はっきりとした原因はまだ解明されていません。では微細運動の機能的発達が遅れている場合、どのように支援すればよいのでしょうか。 微細運動能力が欠けていると、指先を使って物をつまむ動作や箸を使って食事をするなどの動作を正確に行えません。このような動作は、脳が適切に身体の各部位をコントロールすることで成り立ちますが、これを「協調運動」と呼びます。協調運動の発達が遅れている場合には、「発達性協調運動障害」に診断されることもあります。 微細運動が不自由だと、細かい作業が苦手になったり、時間がかかったりと、非常にストレスを感じるようになります。粗大運動とも切り離せないので、早期に発見して迅速に対策をとる必要があります。 微細運動の発達を促すためには、身体を根幹的にコントロールする粗大運動がベースになければなりません。 微細運動を訓練するには、物を掴んだり、転がしたり、積んだり、投げたりするような動きです。安定的な姿勢を保ちながら、いくつかの動作を組み合わせ、集中的に訓練する方法が効果的だといわれています。ただし、子どもがイライラしてしまうとストレスの原因になるので注意が必要です。 具体的な訓練方法に、積み木遊びやビーズ遊びなど、遊びの場に微細運動を取り入れると良いでしょう。さらに、転がるボールや飛んでくるボールをキャッチする運動や、鉄棒にぶら下がったり、手の平に物を載せて運ぶゲームなど、日常的な活動の中に自然に組み込めれば理想的です。 粗大運動で全身の各部位を連携させながら、微細運動では脳と眼と手指の連携という、精密な動きが要求されるため、指導する側も手本になるような動きを見せることが重要です。日常生活で使用する道具を活用することも1つのポイントです。 微細運動は、ADHDやASDなどと同時に発現することが多いため、アセスメントが難しいといわれています。では、こうした身体機能発達の遅れを発見するには、どのような方法があるのでしょうか。その検査方法の1つとして世界でも認められている方法が「Vineland-II(ヴァインランド・ツー)適応行動尺度」です。 Vineland-IIでは、0歳から92歳までの年齢層で、一般人の適応行動を基準にして、発達障害や知的障害の人の適応行動を客観的に数値化して評価することができます。適応行動とは「個人的・社会的な充足を満たすために必要な日常生活における行動」と規定されています。 適応行動は、「コミュニケーション」「日常生活スキル」「社会性/対人関係」「運動スキル」の4つに分けて評価します。実際にはこの4つの分類に下位領域があり、微細運動は「運動スキル」の領域で評価されます。 実際の評価は、自然な会話の中に質問を組み込んだ「半構造化面接」として行われ、結果を数値化することで客観的な評価が可能になります。 微細運動の発達に遅れがあると、自分の行動にイライラするようになり、処理できないほどのストレスが発達障害の改善を妨げる危険性もあります。支援の現場では日常の中に微細運動を上手に組み込んで、子どもたちの可能性をさらに広げてあげることが大切だと言えるでしょう。