2021.06.03
障がい者の雇用を確保するために、公的な支援によりさまざまな角度からのサポートを行う制度が「就労移行支援」です。実際にこの制度を利用することにより、障がい者の雇用改善には一定の効果が表れています。
それでは、就労移行支援では具体的にどのようなサポートが行われているのでしょうか。その内容を確認するため、ここでは就労移行支援の一般的なプログラムについて紹介します。
就労移行支援とは
就労移行支援は「障害者総合支援法」のもとで、一般企業やNPO法人などが運営する就労移行支援事業所が主体になって行っています。その主な役割は、職業訓練や就職活動などのサポートを通して、障がい者の就労を全面的に支援することです。
対象者
就労移行支援を利用できるのは、18歳以上65歳未満で一般企業への就労を希望し、支援事業を通じて適性に合った職場への就労が見込まれる人です。基本的には身体的障がい、精神的障がい、知的障がい、発達障がいに該当する人であり、難病の人でも要件を満たせば対象者になります。
目的
就労移行支援の目的については、障害者総合支援法に明記されており、その基本理念をまとめると、障がい者が基本的人権に基づき、個人として尊重される社会生活を送れるようにすることが最大の目的です。
就労移行支援の主なプログラム内容
ここからは、就労移行支援のプログラムについて解説しますが、その内容は事業所によって異なることも考えられます。一般的に実践されているプログラムをステップごとに紹介しますが、さらに詳細な内容については、それぞれの就労移行支援事業所に問い合わせてみてください。
就労移行支援で行われるプログラムは、主に就職に至るまでの準備と、就職活動のサポートです。それらのプログラムの概要を、これから順番に解説します。
1)個別支援計画の策定
まず、障がい者が就労移行支援を利用するためには、事業所スタッフとの面談を行い、本人に関するさまざまな情報を収集したうえで、個別支援計画を策定します。この計画は、定期的にモニタリングして必要があれば修正していきます。
2)職業訓練
職業訓練にもステップがあり、まず仕事に就いたと仮定して、毎日の生活パターンを整えることから始めます。この段階では、本人の就労するという意思を確かめることも重要です。その後は、実際にいくつかの作業を体験して仕事の進め方や問題点を把握し、具体的な就労先の選定なども行います。
3)技能の習得
現在はパソコンを使った仕事が多いため、就労移行支援でもパソコンスキルの習得を行うケースが増えています。他にも本人が希望する職種に合わせた技能を、実務に役立つレベルに達するまで支援を行います。
4)就職活動のサポート
最終段階としては、本人の意思を尊重して就職先を選定し、スタッフがサポートしながら就職活動を進めます。求職から求人への応募、さらに面接まで、本人の不安を最小限に抑えられるようにスタッフが支援します。
こうしたプログラムの他にも、実際に企業で職場体験することなども可能です。また、就労後の職場定着率を高めるための支援も行いますが、それは「就労定着支援」の制度に引き継がれます。
今後は仕事への定着が課題に
就労移行支援では、障がい者の雇用機会を増やしてスムーズな就労をサポートします。自分だけで就職先を決めたり、実際に面接をしたりすることが困難な障がい者にとっては、非常に頼りになる制度です。
しかし、就労支援は雇用が決まれば終わりではなく、その後いかに障がい者を職場に定着させるかが課題になります。現在、その取り組みは「就労定着支援」に引き継がれていますが、今後は就労移行支援との二本立てで、継続的な障がい者の就労支援を行うことが求められるでしょう。