2021.07.06
現在、障がい者の就労をサポートするため、「障害者総合支援法」のもとでさまざまな支援が行われています。こうした支援は政府の主導のもと、都道府県や市区町村により指定された一般企業、医療法人やNPO法人などが主体となり行っています。
これらの取り組みでは、どのようにして一度就労した障がい者の定着を促進するかが大きな課題になっています。この記事では、そのための支援策である就労継続(定着)支援について解説します。
就労継続(定着)支援の業務内容
平成30年度の改正により、障がい者総合支援法のもとで、「就労移行支援」「就労継続支援」「就労定着支援」という3つの事業が統合的に進められることになりました。まずはその内容について、それぞれの支援事業ごとに紹介しておきます。
就労移行支援の内容
就労移行支援では、主に一般企業への就職を目指す障がい者に対して、職業訓練などの事前準備から、就職活動~就職までをサポートします。就職に必要なパソコンのスキルなども身につけることができ、障がい者の就職率向上に貢献しています。支援期間は原則2年間です。
就労継続支援の内容
就労継続支援は一般企業への就職が難しい障がい者に対して、支援の提供を続けながら同時に仕事の提供も行う取り組みです。就労継続支援には「就労継続支援A型」と「就労継続支援B型」とがあり、障がい者はこの2つのタイプから、自分に合った支援を選んで就労します。
まずA型事業所では雇用契約を結んで働くことになり、リハビリや職業訓練を受けながら業務に就きます。一方のB型事業所では、雇用契約を結んでの継続的な勤務が難しい障がい者が、やはりリハビリや職業訓練を受けながら働くことができます。A型・B型のどちらにも、利用期間の限度はありません。
就労定着支援の内容
もう1つの就労定着支援とは、一般企業に就労した後の障がい者に対して、その企業への定着を促す取り組みです。職場で働く障がい者の悩みを聞きながら、適切なアドバイスを与えたり、雇用主との間の調整をしたりしながら、勤務の継続を目指します。支援期間は原則3年間です。
就職率と定着率について
障がい者総合支援法では、官民を問わず一定以上の割合で障がい者の雇用を義務付ける「障害者雇用率制度」が規定されています。一般的には「法定雇用率」と呼ばれていますが、この制度は現在どの程度の効力を発揮しているのでしょうか。
就職率の現状
令和2年6月時点で、全国の企業等で就労している障がい者の数は約578,000人です。就労系障害福祉サービスから一般就労する人の数は年々増加して、令和元年には約22,000人に達しており、これは5年前のほとんど2倍にあたる数字です。
障がい者における雇用者数は毎年過去最高を記録していて、現行の法定雇用率が2.2%であるのに対して、実雇用率は2.15%にまで上昇しています。この結果を見ると、障がい者雇用は年々増加傾向にあるといえるでしょう。
一般企業への就職は少ない
詳細にデータを分析してみると、就労系障害福祉サービス終了後に一般就労した障がい者の割合は、就労移行支援の場合は54.7%と高い水準を保ちながら毎年増加しています。ところが就労継続支援になると、A型が25.1%でB型が13.2%と、かなり低い水準で推移しています。
確かに一般企業への就労を目指す取り組みに違いはありますが、就労移行支援と就労継続支援との就職率には大きな開きがあり、それが年々拡大することは、障害者総合支援法における重大な課題になりつつあるのかもしれません。
就労継続(定着)支援の利用方法、流れ
就労継続(定着)支援の利用を考えたら、まずは市区町村の障害福祉課に相談してから申請を行います。その場合、以前就労移行支援事業所を利用して職に就いた人は、最初にその事業所に相談することをおすすめします。利用の対象者や条件については、厚生労働省のホームページで確認するか、障害福祉課などに問い合わせるとよいでしょう。
申請を決めたら「サービス等利用計画」を作成します。これは自身でも作成できますが、難しいようなら障害福祉課などに相談して、アドバイスを受けることもできます。この計画書と申請書類一式を提出して、審査により利用が決定したら、「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。
そこから先は、就労継続(定着)支援事業所との間で契約を結び、実際のサービスを受けることになります。また利用にあたっては、毎月決められた自己負担金を支払うことになるので、その仕組みについても事前に問い合わせておくことをおすすめします。
就職率アップが今後の課題
就労移行支援から就労継続(定着)支援までの流れの中で、障がい者の雇用環境は徐々に改善されています。特に就労移行支援を利用した就労については、年々増加傾向にあり一定の成果を収めているといえるでしょう。
しかし、一方の就労継続(定着)支援に関しては、依然として低い水準で推移しています。今後は障害者総合支援法のもとで、これらの取り組みすべてにおいて、一定以上の成果を上げることが課題になるでしょう。