2021.02.05
<社会福祉法人清寿会>
愛知県豊橋市で多機能型事業「輝望」を運営。18歳〜70歳までの幅広い通所者を対象に、障害者就労移行支援と就労継続支援B型のサービスを提供。日中活動として「一人ひとりが主役になれる作業を提供する」をコンセプトとしています。たくさんの種類の作業を通して実践訓練を行い、VR訓練と合わせて利用者様の成長につなげていこうと考えられています。
今回は、emouを通じて様々な活動をされている西田様にお話をお伺いしました。
「VRノート」を一人ずつ用意して、利用者の成長を可視化
――――導入して1ヶ月が経ちましたが、現在はどのようにご利用いただいていますか?
今は、定期的に利用しているというよりは、単発的に利用している感じですね。
利用者にVRコンテンツを見ていただいて、その人に合っているかどうか、必要かどうかを判断しています。
中には、VRでも場面を理解できない方もいるのですが、その場合は、別の方法でSSTを実施してから、VRを体験してもらうのがよいと考えています。
そのため、VR体験のレベルが合っている方、効果が見えそうだなという方を対象として利用しています。
1セッションはだいたい30分〜45分くらいで実施しています。
現在VRゴーグルを2台導入しているので、2〜4人のグループで体験し、その都度、振り返りを行っています。
実は、最初は5〜6人で実施していたのですが、待ち時間が多くなってしまうと飽きてしまうので、4人以下がちょうどいいかなと思っています。
清寿会では「VRノート」というものを一人ずつ用意しています。
「VRノート」とは、ワークシートのようなもので、VRを体験していただいた後に、「何をやったか」「どんな内容だったか」「どの選択肢を選んだか」「感じたこと」などを書いていただいています。
これをもとにグループで話し合いを行うことで、自分の意見を伝えるということの訓練になっています。
実際に、人前で話せるようになった人もいます。
また、同じコンテンツを2〜3回繰り返し体験してもらうことで、より理解が深まっていき、始めは短かった「VRノート」への文章が、だんだんと長くなっていくという変化も見受けられます。
実際に起こったトラブルと似たコンテンツをその場で体験する
――――VRノートで毎回の記録や感想などを残すことで、利用者の変化も見ることができるのですね。
コンテンツはどのようなものをご利用いただいていますか?
最近は就労編や(職業体験の)書店編などを使っています。
発売日前のCDを購入したいと言われたときにどう対応するかなどを体験できる、(職業体験書店編の)「大ファン」というコンテンツはよく使っていますね。対応例の選択肢もあるので、いい学びになっています。本屋などはみんなが行ったことある場所なので、実生活との親近感が沸き、わかりやすいんだと思います。
20歳代の利用者に、高校生のシリーズを使うこともあります。登場する人たちは高校生ですが、特に問題ありません。
また、実際に起きたトラブルの内容と似たコンテンツを選ぶこともあります。
施設では利用者が作業を行なう時間があります。その作業中に利用者同士でトラブルが起きてしまうことがあるのですが、その状況に似たストーリーのVRコンテンツをその場で体験してもらいます。そうすることで、コンテンツの内容を参考に、現状に対してのSSTを行なうことができ、お互いに学んでもらうことができるのです。
実生活の自分とリンクする使い方がより効果的
利用者の中に、怒りをコントロールできない人がいました。一度怒ってしまうと自分でも落ち着くことができないんです。その際に、(学校編の)「感情メータ−」を体験してもらいました。このコンテンツは、自分の感情に上手に向き合い、対応できるか、というもので、感情メーターが可視化されます。
こちらを体験することで、自分の状況とリンクして考えることができていました。
もちろん、どのコンテンツでもVR体験をするということだけでもよいのかもしれませんが、実生活の自分とリンクするコンテンツを選んで使用するとより効果的だと感じています。
――――実生活で何か起こった時に、VRを使って学んでいただく。確かに、リアルとリンクすることで利用者も理解しやすいですね。
VRを売りに、施設見学から、その場で通所が決定!
――――見学会も実施されているとお聞きしたのですが、そこではどのようなコンテンツを体験していただいていますか?
そうですね、定期的に施設の見学会を実施しています。来られた方には、必ず体験してもらっていますね。VRを施設の売りにしたいので。そこで使うのは、(思春期編の)「千円だけ」というコンテンツです。
お金の貸し借りについてのストーリーで、誰でも一度は経験したことがある出来事なので、反応はとてもよいです。
1月に見学していただいて、そのまま通所が決まった方が1名いらっしゃいます。
ご本人と保護者、相談員が来られ、VR体験していただきました。
その方は、VR含めて当施設をとても気に入ったとのことで、その後、他の施設も見学されたそうですが、その日の夕方にはお電話いただき、通所します!と。
そして、今も休まず通っていただいているのが嬉しいですね。
――――12月にはラジオにも出演され、私たちemou事務局でも聞かせていただきました。emouのご紹介もしていただき、ありがとうございます。どのような経緯でラジオに出演されたのでしょうか?
地元ラジオ(エフエム豊橋84.3「やしの実FM」)のパーソナリティーの方と知り合いだったので、紹介していただきました。そのパーソナリティーの方とは、設立記念祭用に障害者を応援する曲「ピース」を作りラジオで流してもらったり、イベント告知をさせていただいた時に知り合いになりました。
今回も、emouというサービスをはじめたので、ラジオに出演させてほしいと声をかけて、番組内で紹介する機会を作っていただきVR体験会を実施する前のタイミングで出演させてもらいました。
その結果、体験会では、利用者、保護者、先生、その他関係者など含めて、20名の方が集まりました。
ラジオ以外にも、地元ケーブルテレビ「ティーズ」の掲示板でのイベント告知、SNSでの告知や事前に支援学校の先生にお話をしていたり、チラシを作って宣伝していたりしていたので、その影響もあったかとは思いますが。
更に、東愛知新聞社の記者にも声をかけて、当日取材に来ていただき、体験会の様子を記事として掲載してもらいました。
――――西田様から積極的にメディアにも声をかけていらっしゃるのですね。emouと共に様々な活動していただき嬉しく思います。
今後の利用はどのような予定でしょうか?
冒頭でお話したように、今は定期的というよりは単発でランダムな利用(日に数回)になっています。
来月(2月)からは、ストーリー建てを考えてコンテンツを選び、1週間継続して利用してもらうことで、どういう結果や効果が出るのか検証してみようと考えています。
――――emouを最大限に活かせるよう、より効果的な利用方法を、常に積極的に取り組まれており、大変嬉しいです。ぜひ、また、その後の効果などのお話をお聞かせいただければ幸いです。
ありがとうございました。