【発達障がい支援】集団適応力とは | ソーシャルスキルトレーニングVR

2021.02.22

発達障害には、自分の周囲に行動を合わせられないといった集団適応力の欠如という症状があります。特徴としては、集中力が続かないことと、相手に合わせて行動できないことなどが挙げられます。 学校で集団生活を送る上でも問題になることが多く、社会生活に適応することも難しいので、早い内から改善を心がけることが重要です。今回は集団適応力の概要と、支援する立場でできることを解説します。 私たちは社会の一員として、集団の中でコミュニケーションをとりながら生活しています。こうした社会性は最初から身についたものではなく、幼稚園から学校までの集団生活の中で徐々に獲得する「集団適応力」に関わっています。 学校生活でも社会に出てからでも、集団の中では一定のルールを守らなければなりません。ところが集団適応力が発達しないと、社会的ルールを理解できないことや、強いこだわりや思い込みによって、ルールに合わない行動をとってしまう場合があります。適切な集団適応力を備えていることは、社会生活をおくる上で非常に重要なことなのです。 集団適応力が欠けていると、子どもたちの社会の中でも問題が生じてしまいます。まずはその問題点の内容と、支援する立場として対処する方法について考えてみましょう。 集団適応力が欠けていると、大小さまざまな問題が生じることがあります。例えば、周囲の子どもたちに迷惑な他害行動です。周りの子どもを不安にさせるのみならず、当人が集団への参加しにくくなり、大きな問題にも発展する可能性があります。また、自分の意思が通らない時に、衝動的に走り出したり、部屋から飛び出したりする行動を起こすことも考えられます。そのため、集団としてまとまった行動がとれず、外出先で集団から離れてしまうなど、といったことが起こる可能性があります。 他にも汚物に触ったりするなど、良しとされない行動をとることや、遊びの中で喜びや怒りの感情をコントロールできないという問題行動もあります。いずれにしても周囲の子どもたちへの影響が大きく、当事者が孤立してストレスを抱えてしまうことにもなるため、早めに対策をとることが求められます。 このように集団適応力が欠けている子どもに対して、発達障害者支援の場では、「三項随伴性」を指針にして対応します。これは「問題行動が起こる前のできごと」と「問題行動」、そして「行動の結果」という3つをセットで考えながら対応する方法です。 この方法では、原因となるできごとと行動とを結びつけて観察し、問題行動の後の周囲の対応によって、結果がどのように変化するのかを確認します。 重要なのは、子どもが望ましい行動をとった時に褒めることです。問題行動を起こした場合、すぐに反応せず子どもの様子を伺います。その後、行動に対して周囲に変化がないと子どもは問題行動を起こす前に考えたり、問題行動そのものが減ったりすることもあります。 子どもの行動に変化があれば、自分から相手に「教えて」と言えるように促します。さらに教えた通りに子どもが望ましい行動をとれば、直ちに褒めたり認めたりしてあげます。子どもにとっては「教えて」という言葉の先に喜びが待っているので、問題行動が改善されることも考えられます。発達障害者支援の場では、子どもに合わせてほめ方を工夫することや、「教えて」というヘルプカードを作っておくなど、望ましい行動を引き出すための準備をすることが必要です。 集団適応力は小さいうちから、同年代の集団の中で生活しながら身につけますが、子どもの意思を尊重しすぎたり、問題行動を起こした場合の対応を間違えたりすると、子どもは問題行動を起こせば周囲が助けてくれると錯覚します。 では、こうした問題行動はどこまでが許容範囲内であって、どこから先が集団適応力の欠如と判断されるのでしょうか。それを客観的に評価する仕組みが、世界でも認められている「Vineland-II(ヴァインランド・ツー)適応行動尺度」という検査方法です。 Vineland-IIでは、0歳から92歳までの年齢層で、一般人の適応行動を基準にし、発達障害や知的障害の人の適応行動を客観的に数値化して評価することができます。医療分野だけではなく、教育や福祉分野でも活用できます。 また、適応行動を4つに大別し、それぞれ「コミュニケーション」「日常生活スキル」「社会性/対人関係」「運動スキル」に分けて評価します。さらに、この4つには下位領域の評価があり、表出言語についてはコミュニケーションの一領域として分類されます。 Vineland-IIを活用することで、発達障害者支援の現場では、子どもたちの得意分野と苦手分野を絞り込み、支援計画と支援の実践に活かすことができるでしょう。 私たちが生きていくためには、社会の中で他者と上手に付き合う社会性、つまり集団適応力が身についていると良いでしょう。発達障害者支援の現場では、早期に対応していくことが重要と言えるでしょう。

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