2021.04.30
「うちの子はボールがうまく蹴れない」「他の子はとっくに文字を書いているのにうちの子は全く…」といったお悩みを抱える親御さんは、我が子が何かしらの発達障害ではないのかと不安を感じているかもしれません。
発達性協調運動障害(DCD)の子供は運動障害があるわけではないので、体は健康だとしても成長に少しでも遅れを感じると「もしかして」と思いやすいものです。
しかし、運動が苦手だったり少し成長が遅かったりするだけでは発達性協調運動障害と決めつけることはできません。そのため、どんな場合に該当するのか、主な症状はどのようなものがあるのかを正しく知って、発達性協調運動障害への療養が必要かどうかを判断しましょう。
発達性協調運動障害(DCD)とは
発達性協調運動障害とは、体に痺れがあったり動かしにくかったりと運動障害はないにもかかわらず、姿勢の維持ができない、字がうまく書けないなどの症状が出る障害のことを指します。
子どもの性格によって不器用だったり運動が苦手だったりしますが、その苦手の度合いが人並外れていると、発達性協調運動障害かもしれません。
発達性協調運動障害の頻度は約6~10%といわれていますから、1クラス30人だとすると2~3人となるため、決して珍しい障害ではないのです。
発達性協調運動障害は大人になっても50~70%の頻度で症状は残るとされています。大人になるまで障害が残るとなると、子どもにとっては心身ともに負担になるかもしれません。そのため、早い段階で親御さんが気付き、適切なケアとサポートをしてあげる必要があります。
発達性協調運動障害(DCD)の主な症状
「人並外れて」といわれても、具体的にどのレベルなのかは判断しにくいかもしれません。そこで、発達性協調運動障害の子どもに多い主な症状を以下にまとめました。
発達性協調運動障害の主な症状
- 指先を使うのが苦手・・・ボタンが留められない、紐が結べない、はし・はさみ・コップが使えない、文字がうまく書けない
- 身体を動かすのが苦手・・・はいはいが遅い、転んだときに手が出ない、階段の上り下りが苦手、縄跳びが跳べない、ボールが蹴れない、何もないところでよく転ぶ
- 言葉を喋るのが苦手・・・言葉が不鮮明でわかりにくい
上記の症状はほんの一部で、子どもによって出る症状はさまざまです。
どれを見ても「苦手」の一言で済まされるようなものですから、我が子が発達性協調運動障害であると気がつかず「なぜできないの?」「簡単なことなのに」と叱りつけてしまうケースは少なくありません。
小学生以上になると周りの大人からは「怠けている」「やる気がない」と思われてしまう場合もあります。できる限り早く子どもが発達性協調運動障害であると気づいてあげることが、子どもが周囲に対して劣等感を抱いてしまうことを防ぐための重要なポイントです。
そのためには子どもの小さなサインを見逃さず、思い当たる症状がいくつかあれば、発達性協調運動障害の診断を受けることをおすすめします。
発達性協調運動障害(DCD)への対処(療育)
発達性協調運動障害と診断されたら、子どもに対して療育や支援が必要となります。発達性協調運動障害の場合は以下の「理学療法」「作業療法」「感覚統合療法」の3つを組み合わせて療育を行いますので、それぞれ具体的な内容を説明しましょう。
理学療法
理学療法とは、運動が苦手な子どもに対して物理的な手段を使って治療を行う方法を指します。物理的な手段とはマッサージや電気刺激、温熱などです。
ただし発達性協調運動障害の場合は、主に苦手な運動のサポートを意味することが多く、歩く、走るなどの粗大運動やジャンプ、スキップなどの応用的な運動を理学療法として行います。
理学療法の目的の中には「現在の身体機能や健康を維持・増進し、未来のケガや病気を予防する」という内容もあるので、物理的な手段を使わなくても苦手な運動をサポートする療育は理学療法の一部です。
作業療法
作業療法とは、手先を動かしたり友達と遊んだりと、実際に作業をしながら社会に適合する能力を身につけていく療育です。作業の内容は日常生活に必要な内容が主なものとなり、絵を描いたり鉛筆を使ったりなどの微細運動が行われます。
苦手な作業を楽しく練習していくことで克服までのスピードが速くなり、克服できれば子どもの自信へとつながるでしょう。
感覚統合療法
発達性協調運動障害の子どもは、周りの子より匂いに敏感だったり、周りの刺激に敏感になり過ぎて落ち着きがなかったりします。
これは味覚、嗅覚、視覚、聴覚などの感覚の統合がうまく行われていないのが原因です。感覚を統合させるための療育が「感覚統合療法」となります。
具体的な療育内容は、子どもたち自身が楽しみながら、自分からやりたいと思えるような練習をさせて、成功体験を作ることを目的として決められます。まずは親御さんが子どものことを理解し、作業療法士とともに療育内容を決めましょう。
まとめ
発達性協調運動障害の場合、周りの子どもと比べて運動や手先を動かすことが苦手などの特徴があります。
苦手の度合いが軽度であれば日常生活に問題はないですが、過度な場合は社会に適合するために療育が必要です。
とはいえ、自分の子どもが本当に発達性協調運動障害かどうかを親御さんが判断するのは難しいのではないでしょうか。思い当たる節があればまずは医療機関を受診して、診断を受けるところから始めましょう。