2019.06.20
ここからは年代別に、自閉スペクトラム症を抱える人たちに見られる特徴を詳しく紹介していきます。
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VRによるSSTの無料デモ体験はこちら 自閉スペクトラム症の子供は、興味や関心が限定的になりやすいことが知られています。関心を示さないものもある中で、好きなものには非常に強いこだわりを見せる傾向がみられます。 興味を惹かれたものを熱心に集めるお子さんもいれば、特定の事柄に関連する情報を驚くほどに記憶しているお子さんもいます。例えば電車が好きなお子さんであれば、ありとあらゆる車両の名前や特徴に関する知識を持っていたり、日本各地の路線の駅名をそらんじてみせたり、といったことがあります。 普段は無口でおとなしくても、好きなものの話題になった途端に饒舌になることもあります。ただ、話し相手が別の話題に移ろうという素振りを見せても、相手の意図を汲むことが難しいため、それに気がつかず、話し続けてしまう場合があります。 自閉スペクトラム症には、想像力の特異性という特徴があることは先に説明した通りです。社会的な文脈を想像することが苦手で、架空の状況をイメージしたり、状況に合わせて柔軟に対応したりするということがあまり得意ではありません。 このため、あるシチュエーションを設定し、その役柄を演じるという「ごっこ遊び」が難しく、楽しめない場合が多いようです。遊んでいる相手に合わせて遊びを展開させていく柔軟性も必要になるため、決まったあらすじやルールを好むお子さんにとっては、どうしても馴染めないのでしょう。また、積み木を車に見立てて走らせて遊ぶような「見立て遊び」も、同様の理由から好まないことが多くあります。 逆に、「なにをすべきで、なにをしてはいけないか」というルールが明確に決まっていれば、変化に伴う不安を感じることは少なくなります。自閉スペクトラム症のお子さんのなかには、ルールを忠実に守ることが得意なお子さんが多くいます。 もちろんルールを守るのは良いことですが、ルールの順守にこだわるあまり、例外的な事態に柔軟に対応することが難しい場合があります。例えば幼稚園におけるトイレの順番待ち。あるお子さんが腹痛のため、どうしても早くトイレに行きたくなったとします。その子の様子や顔色を見て、周囲のお子さんたちはかわいそうだと順番を譲ってくれるかもしれません。 一方、自閉スペクトラム症のお子さんは、「順番を守る」というルールを重要視し、ルールから外れる行動に怒ったり、かんしゃくを起こしたりすることがあります。また、そういった状況の時に「本当は自分もお腹が痛くて早くトイレに行きたい」といった本音があっても、うまく説明できずにいることもあります。その結果、悪気がなくとも表面的には融通が利かない態度に見えてしまうこともあります。 自閉スペクトラム症のお子さんたちのなかには、ある特定の刺激に対して、独特な反応を示したり、体の動かし方が不器用だったりする方がいます。これは、受けた刺激を感覚として脳に伝え、それを脳から身体へと伝える過程に困難さや偏りがあるために起こります。 感覚の違いや体の動かし方は、周囲はもちろん、本人にも他のお子さんとの違いが認識しづらいものです。周囲の理解が進みづらく、場合によっては、自信の喪失や周囲からの孤立という事態にも繋がりかねません。日常生活や学校生活の中で便利なツールをうまく活用したり、配慮をお願いしたりすることで、お子さん本来の力を引き出す助けになります。 【視覚】 ◆特定の模様に遠くからでも気が付く ◆文字や数字に興味を示さない ◆日の光を過剰に眩しがる 【聴覚】 ◆特定の音、大きな音を嫌がる ◆外に出たとき、周囲の音が同じ大きさで聞こえて混乱する 【嗅覚】 ◆食べ物の匂いで気持ち悪くなる 【味覚】 ◆特定の味や食感にこだわり、偏食が激しい ◆決まった温度や味付け以外の食事を受け付けない 【触覚】 ◆抱きしめられると圧迫感で苦しくなる ◆人形や布など特定のものをずっと触っている ◆自分を傷付けることがある 自閉スペクトラム症のお子さんのなかには、五感をはじめとした感覚がとても鋭敏になる方がいます。そうしたお子さんにとっては、日常生活において接する様々な刺激に身体が敏感に反応してしまうため、日々強いストレスにさらされることになってしまうのです。 お子さんによって、何を過敏に感じるかは異なります。例えば聴覚だけをとっても、電車の特定の駅の発車ベルがとても苦手だったり、トイレの乾燥機の音で頭痛を感じたり、スタート合図としてのピストルの音でパニックになったりと、苦手とするものは様々です。 逆に、特定の感覚がとても鈍感なお子さんもいます。触覚が鈍麻している場合、血を流すほどの怪我でも、特に気にしたそぶりを見せなかったり、パニックになったときに自分の腕を強く噛んでしまったりしてしまいます。痛みに気づきにくいゆえに、自分を傷つけるような行為に及ぶ危険もあるため、この場合は親御さんや保護者の方はとりわけ注意が必要です。また、自分の疲れに対しても気がつきにくく、ついオーバーワークをしてしまい、体調を崩す場合もあります。休憩を促し、休ませることも必要です。 身体の各部位を別々に動かすことはできても、それを連動させながら同時に動かすことが苦手なお子さんもいます。これは発達協調性運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)と呼ばれ、自閉スペクトラム症にしばしば見られる症状の一つです。 発達協調性運動障害の場合、ボール遊びや縄跳びなど、身体の各部を連動させる動きが必要になる運動を苦手とします。また、普段の生活においても、歩き方に不自然なところがあったり、ドアを必要以上に力強く閉めるといったように加減ができなかったりする場合には、発達協調性運動障害の疑いがあります。 ここまで簡単に、幼少期に見られる自閉スペクトラム症の特徴を説明しました。上記のような特性を見れば、定型発達のお子さんに比べて誤解を受ける状況が多いことが分かります。 自閉スペクトラム症のお子さんは、苦手なことや難しいことが多くある一方で、他のお子さんと同じように素晴らしい能力や才能を持っています。健康的な自尊心をはぐくみ、自己理解をしていくことで、強みを活かして社会で活躍される方々が大勢います。 困難や問題を抱えていることは確かですが、同時に得意なこともあるのだということも忘れてはいけません。誰しも得意なこともあれば、苦手なこともあります。それは普通のことです。得意なことも苦手なことも含め、それらがまるごと「自分らしさ」です。 持って生まれたお子さん特有の性質を個性の一つとして捉え、家族や地域の方、学校、行政、福祉サービスといった周囲を頼りながら、お子さんの自立へ向けたサポートを受けていくこと、悩みを抱え込まないことが親御さんや保護者の方々には重要です。
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