2020.10.23
「障害福祉という同じ社会課題に向き合っている現場スタッフ同士の意見交換の場がほしい」
emou事務局では、emouをご利用いただいている方同士の交流の場として、定期的に座談会や支援者交流会を開催しております。 今回は、「自己理解、自立〜思春期の利用者にどう向き合うか〜」をテーマにして、放課後等デイサービス(以下「放デイ」)の現場でご支援いただいている皆様にオンラインでお集まりいただきました。 今回のテーマは、
「自己理解、自立〜思春期の利用者にどう向き合うか」
この座談会では、emouに関することだけではなく、様々な支援方法や施設運営に及ぶまで、当初予定していた1時間では収まりきれないくらいの熱い意見の交換ができました。 3回に分けてレポートいたします。
座談会開催レポート:「自己理解、自立〜思春期の利用者にどう向き合うか」 Part 1はコチラ。 座談会開催レポート:「自己理解、自立〜思春期の利用者にどう向き合うか」 Part 2はコチラ。 座談会開催レポート:「自己理解、自立〜思春期の利用者にどう向き合うか」 Part 3
リアルな体験や経験をVRで実現し、お子様の自己肯定感を高めていく
――株式会社ジョリーグッド 青木(以下、JG青木)
最後に、VR(emou)の話もしたいと思います。 emouを使って学びが深かったコンテンツについて、その使い方や、受講者の困り感を解決することができた、自己肯定感を高めることができたといった、エピソードがあれば教えてください。
自己紹介も、VR体験だとお子様の反応や取り組む姿勢が格段に違う(株式会社まなぶ)
――株式会社まなぶ 中川様(以下、まなぶ 中川様)
実際に、emouを使いこなせているかというと、まだそこまで使いこなせていませんが・・・ 小学生のお子様に自己紹介のVR体験を実施しました。自己紹介を、実際の現場でやるのと、emouを利用してやるのとでは、お子様達の反応や取り組む姿勢が格段に違います。 emouを利用したときのほうが、お子様達の興味が湧いていました。
また、最後に点数が出るものがありますが、その点数をみて、「あ!俺100点だ!」「90点だ!」と、喜んでいたり、ちょっとした達成感というのも、お子様達には良い影響だったと思います。 画面には知らないお子様達が出てきますので、普段の校舎のなかで実施しているSSTよりも、ちゃんと背筋を伸ばして視線を合わせて話をするといったところも見て取れました。 お子様達の反応はすごく良かったということを実感しました。
学校が舞台のコンテンツがお子様には解りやすい VRでリアルな場面を体験することが、お子様から情報を聞き出すツールに(株式会社Kaien)
――株式会社Kaien諸見里様(以下、Kaien諸見里様)
emouは主に平日に使っています。 中川さんも仰ってたように、自己理解、自己決定というところで、VR(emou)を活用させていただいています。 コンテンツについては、やはり、学校が舞台となっているコンテンツがお子様にとっては解りやすいかと思います。
emouを利用したことで、お子様達が、こんなに喋るんだとか、こんなにいろいろ思っていたんだということを支援者側で理解できたことが、一番の効果だと思っています。
コンテンツのひとつに「かっこいいペン」というのがあります。 女の子から秘密のお土産としてペンをもらうのですが、他の友だちに秘密であることを言うか言わないかというところで、それを見たお子様から、「実は友達から秘密のことを言われたことがあった」や、「同じようなことが学校であった」といった話が出てきます。 普段、面談していてもなかなか実際の学校のことを喋ってくれないお子様も、VRでリアルな場面を体験することで、学校のことがイメージしやすく、会話のきっかけになったり、お子様から情報を聞き出すツールとしても使わせてもらっています。
――JG青木
お子様の反応はいかがですか?
――Kaien諸見里様
VRを体験してみて、「スゲー!」という声はもちろんですが(笑)、ITリテラシーの高いお子様は、「あ、VRね」といった反応のお子様もいます。 「自分ってこうなんだ」とか、「こうやってみようかな」、「学校で実際に同じ場面があった」といった、実体験でも対応できたといった声も、結構挙がってきています。
――JG青木
例えば、年齢に応じてコンテンツを使い分けるとか、使い方の違いなどといった、小学生と思春期のお子様に対してVRだと違う点などはありますでしょうか。
――Kaien諸見里様
そうですね。 年齢だけではなくて、知的レベルでも異なります。 知的レベルが低かったり、小学校低学年ですと、ブレインストーミングというか、意見やどう考えているのかをお子様に言ってもらうことに、重きを置いています。
中学生・高校生やIQの高めのお子様には、他の人の意見を聞いて自分がどう思うかに重きを置いて、自分以外の人が感じることと、他者と異なることを思った時などの、建設的なやりとりをするためのことをやっています。
小学校低学年は自分の発言を開示、自己開示するという点に重きを置いていて、年齢が上がっていくにつれて、他の人の意見を聞きながら自分はどうするのかということを意識しています。
お子様達のメンタル面を考えながら使っていく(株式会社UNITED CIRCLE)
――JG青木
川村様と牛田様は使い始めてまだ2〜3ヶ月くらいかと思いますが、emouを使い始めて良かった点や、あるいは不明点などありますでしょうか?
――UNITED CIRCLE川村様
実際にはまだきちんと活用できておらず・・・ どちらかというと、施設スタッフで使わせてもらって検討しているところです。 今、まだ学校が不安定な状態で、お子様達のメンタル面を考えた時に、どこからスタートしたらいいかなと考えています。 別府市では、徐々に学校が落ち着いていきていますので、7月から少しずつ取り入れていく予定です。
小学生と中高生で考え方や捉え方が異なる点など、ここでお話を伺えてよかったと思います。
VR体験のなかではお子様達も緊張しないで話すことができるように(一般社団法人全国就労支援協会)
――JG青木
emouには、SSTのコンテンツはもちろんですが、期間限定で動物園などのお楽しみコンテンツもありますので、お子様のストレスをまず解消するといった活用方法もできると思います。
――一般社団法人全国就労支援協会 牛田様(以下、就労支援協会 牛田様)
当施設も使い始めたばかりで、職員間でemouを使ってどのように授業を進めようかということを、試しながらやっています。 使ってみたのは、相手のことを考えた嘘やルール、校則や自己紹介に関するコンテンツです。
お子様も、勉強(SST)というよりは、ゲーム感覚というか、これはなんだろう?という反応でした。 その中で、緊張してなかなか大人と話すことができない、自分から困ったことを大人に話すということができないお子様に、emouのなかだと緊張しないで話せるようになるのではないかと、コンテンツをうまく活用していきたいと考えています。
――JG青木
emouの使い方としては、2つあるかと考えています。 ひとつは、自分がよく遭遇しそうな場面を体験すること。
もうひとつは、自分がなかなか体験できない場面を体験すること。
お子様達にとっては、体験や経験がとても大事で、それが彼らの自己肯定感を高めていくことに繋がっていくと思います。
現在emouでは、職業体験として、本屋スタッフのコンテンツをご用意しています。 そこで、リアルなお金のやりとりというよりは、その雰囲気を体験してみるというシナリオになっていますが、自分が本屋のスタッフだったらどんな空間で、どんなお客様がきて、どんな質問をされてどう答えるかなど、イメージを膨らませることができます。 そこから、お子様が自分のことを、高校生になったら本屋でバイトしてみたいなとか、将来のことを考えてもらったり、自分が体験してこなかったことを体験したりすることができます。 他にも数多くのコンテンツをご用意しておりますので、ぜひ、コンテンツを使い分けて活用していただければと思います。
実際に遭遇しそうな場面と、なかなか体験できない場面の両方をVRで体験できるemou。 お子様たちにとっては、その体験や経験が大事であり、かれらの自己肯定感を高めていくことに繋がります。 学齢期、就労期、職業体験と、現在、100近くのコンテンツをご用意しています。 熱いトークが繰り広げられた座談会「自己理解、自立〜思春期の利用者にどう向き合うか」はいかがでしたでしょうか。 今後も、導入社様同士の意見や情報交換の場として、座談会や交流会を開催してまいります。