2021.02.22
放課後等デイサービス(以下「放課後デイ」と表記)や就労支援施設を開設・運営するためには、法人を設立することが義務づけられており、開業をする上で、法人格の取得について理解する必要があります。 今回は、放課後デイの開設に適合する法人形態と特徴を解説します。 企業や団体が社会の中で活動する場合、法律のもとでの「人」として認められなければなりません。例えば、一般企業では会社設立の手続きをして、登記が完了した時点で「法人」として認可されます。この法人が一般人と同じように、法のもとで手にする権利が「法人格」です。 施設を開設して運営するためには、法人格を取得する必要があります。法人格を有する法人には、株式会社、医療法人、学校法人、NPO法人などさまざまな種類があります。また法人形態の大きな分類としては、「営利法人」と「非営利法人」との2つがあります。 放課後デイの開設・運営は、営利法人と非営利法人との2つの形態で行われています。現在、営利法人には、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」「有限会社」などの種類がありますが、有限会社は新規に設立することができません。 営利法人とは一般企業のように、利益を追求する法人のことです。放課後デイの場合も、従業員を雇用して事業により収入を得ながら、利益を産み出すことを目的に運営されます。 一方の非営利法人は、放課後デイの場合「一般社団法人」か「NPO法人(特定非営利活動法人)」の2種類が一般的です。非営利法人とはいっても、利益を上げることが禁じられているわけではなく、営利法人と同様に収入を増やす活動も可能です。事業で得た利益は、一般企業と同じように経費や人件費に充当できます。ただし、営利法人と大きく違う点は、株式会社などが株主に利益を配当するように、利益の分配ができない点です。利益はすべて非営利法人の活動そのものに使わなければなりません。 このように、営利法人と非営利法人では、事業活動に関しての大きな違いはありません。 放課後デイに適する各法人形態の特徴を解説します。 通常は会社といえば、この株式会社を指すと考えてよいでしょう。有限会社は2006年の会社法施行から、株式会社として扱われ、新設はできなくなりました。株式会社は発起人が資本金を出し合って、株式を発行することで会社の設立を行います。発起人は1人でも設立できます。役員の選任や定款の作成など細かい申請手続きが必要で、設立時には最低でも20万円以上の費用がかかります。 しかし、現在日本国内で最も多い法人形態であり、経営上の自由度が大きいうえに税法上の優遇措置も多いので、放課後デイを設立するなら営利法人の場合は株式会社が最適だといえます。 法人形態の中でも比較的新しく、近年設立の割合が増えているのが合同会社です。合同会社は、簡単にいえば何人かの出資者が集まって一緒に経営を始めるもので、株式の発行は行いません。 株式会社に比べると、設立時の定款認証が不要な点と、設立費用が株式会社の半分以下で済むことがメリットです。設立後の会社運営でも、株式会社ほど複雑な手続きが必要ありません。その上で、税法上は株式会社とまったく同様に扱われます。デメリットを挙げるとすれば、株式会社と比べて認知度が低いことと、融資が必要なときなどに信用度が比較的低いとされています。 現在新たに合資会社と合名会社を設立するケースはほとんどありません。 NPO法人(特定非営利活動法人)は営利法人とは異なり、資本金(出資金)が必要なく、会社を設立するような手続きと費用も一切不要です。営利法人同様に利益を上げることもでき、税法上の扱いも株式会社などとほとんど変わりません。ただし設立時の審査に時間がかかり、行政書士などの専門家に依頼しても、設立までには4~6ヶ月はかかるといわれます。 また、NPO法人は常勤社員と理事などを、決められた人数以上置かなければならず、金融機関からの融資の可能性が一般的に低いというデメリットもあります。 一般社団法人は、事実上法務局への登記手続きだけで設立できます。設立コストは合同会社とほぼ同じで、最低2名で設立できるので、小規模の放課後デイに向いています。 一方で非営利事業と営利事業とを完全に分けて管理する必要があり、運営上の手間やコストが大きくなる可能性があります。NPO法人と同様に、融資を受けられる可能性も低くなります。 放課後等デイサービスを設立し、ご自身が思い描く運営をし続けるためには、法人形態の選定も重要です。設立を目指す事業所の規模や運営方法など、目的を明確にした上、最も適した法人形態を選びましょう。