2021.04.30
主に、障害のある未就学児をサポートする仕組みが、現在「児童発達支援」と呼ばれる制度です。子どもの発達障害などに悩む家庭では、家族だけでは子どもの世話をするのが難しい場合がありますが、そのようなときには児童発達支援が頼りになります。
この記事では、これから児童発達支援に関わる人や障害のある子どもの保護者のために、わかりやすく児童発達支援の概要を解説します。具体的な支援内容なども参考にしてみてください。
児童発達支援とは
障害のある児童の支援事業は、元々は障害者自立支援法を基準に放課後等デイサービスや知的障害児通園施設などが中心となり、それぞれ自律的に進められてきました。それらが2012年の児童福祉法改正により、児童発達支援事業に統合されたのです。
支援の対象になるのは、原則として未就学で障害を持つ子どもです。乳幼児検診などで障害の可能性が指摘された場合や、幼稚園や保育園での活動状況の中で障害が疑われる場合などに、専門の施設に通いながらサポートを受けることになります。
利用するためには地元の市区町村にある相談支援窓口か、障害児童支援事業所を通じて申請を行い、受給者証を発行してもらう必要があります。そのときには、支援を受ける施設を決めたり、支援計画案を作成したりすることになるでしょう。
児童発達支援の支援内容
児童発達支援では基本的に、専用の施設に通いながらサポートを受けます。では、そこでどのような支援が受けられるのか、支援を提供する側と受ける側とに分けて紹介します。
支援施設側が提供するケア
多くの児童発達支援施設では、一般的な幼稚園や保育園と同様に、子どもたちを受け入れてから、さまざまな活動を通じて訓練やサポートが行われます。施設での活動は、子どもたち1人1人に合わせた個別支援計画がベースになっています。
施設のサポートスタッフは、それぞれの子どもたちが抱える問題と現状とを分析したうえで個別支援計画を作成します。この時点で、支援対象になる子どもたちと保護者とを相手に面談を行い、最適な支援方法を策定しなければなりません。
その後、サポートスタッフは個別支援計画に沿って、子どもたちの日常生活に関わるトレーニングや、就学の準備を支援しながら、運動能力やコミュニケーション能力を高める指導も行います。また、保護者からの相談にも随時対応することになるでしょう。
支援施設で受けられるサポート
支援を受ける子どもたちの立場からすると、児童発達支援は視聴覚訓練や言語訓練を行う場であり、就学のための準備をする場でもあります。自立して日常生活を送れるようになるための、未就学児用教育施設の1つと考えればよいでしょう。
さらに児童発達支援では、サービスを受ける子どもたちの家族が適切なアドバイスを受けたり相談したりすることができます。場合によっては、施設に通っていない家庭からの相談にも対応してくれます。他にも施設ごとに違いはありますが、送迎サービスや給食の提供なども可能です。
児童発達支援を提供する施設
児童発達支援のサービスを提供できる施設には、児童発達支援センターや児童発達支援事業所があります。ともに心身に障害がある子どもたちに対して、基本的に通所タイプの支援を行っています。
児童発達支援センターは施設内での支援だけでなく、近隣地域での児童発達支援で中核的な役割を果たす施設です。障害がある場合なら、幼稚園や保育園に通う子どもや、外出できず家庭内で過ごす子どもに対しても支援を行います。
一方の児童発達支援事業所は、児童発達支援センターよりも施設の設置数が多く、より身近できめ細やかな支援を目指す施設です。施設内の人員配置で異なる規定はありますが、これら2つのタイプの施設ではほぼ同等の支援を受けることができます。
児童発達支援に必要な資格は?
児童発達支援において中心的なリーダーとなるのが、児童発達支援管理責任者であり、児童発達支援に関わる施設には必ず1人以上の配置が義務づけられています。資格取得にはいくつかの方法がありますが、いずれにしても一定期間以上の実務経験を積んだうえで、段階的に所定の研修を受講して修了した時点で資格を取得できます。
児童指導員として施設で働く場合には、児童指導員任用資格が必要です。この資格を取得するためには、専門の大学などの教育機関を卒業すること、社会福祉士・精神保健福祉士などの資格もしくは教員免許を取得することが必要になります。
児童発達支援は身近な存在
障害を抱えている子どもや家族にとって、現状に対する悩みと将来に対する不安はかなり大きいものでしょう。児童発達支援は地域に根ざして、さまざまなケースに対応した支援を行っています。悩み続けるよりも積極的に相談すれば、問題解決に1歩近づけるはずです。
支援するサポートスタッフには、障害者支援に関する高い技能と熱意とが求められるかもしれません。しかし社会に出ようとする子どもたちを支え続けることからは、大きなやりがいと達成感が得られるのではないでしょうか。