2021.02.22
発達障害者支援を含め、社会福祉における大きな目標は、障害を抱える本人が日常生活を自立して送れるようになることです。支援者だけでなく本人や保護者が、身辺自立の考え方について理解を持っておくことが大事です。
身辺自立とは、日常生活において身の回りの行動を独立して行えるようになることを指します。具体的な例としては、服を着ることや歯を磨くこと、一人できれいにトイレを使うなどの行動があります。発達障害を持つ人は、仕事をすることや外部の人とのコミュニケーションを取るなどの社会的生活を送れるようになることとあわせ、まずは日常生活を正常に送ることを目標とします。 多くの人にとって、身辺自立、つまり身の回りの行動は、自然とできるようになっているという感覚です。誰に教えられるでもなく、自分のものと他の人の持ち物を区別したり、トイレに行った後は水を流したりしているなど、自然な感覚を持っています。 しかし、実際には、ほとんどの日常生活の行動は親などの大人に教えてもらう、見る、真似することで、初めて正しくできるようになっていきます。つまり、多くの習慣は学習することによって得ているものなのです。 そのため、学習障害を始めとする発達障害がある児童の場合、自然と他人の行動を見て覚えることは難しく、親が何回も繰り返し教えても習得できないことがあります。発達障害者に向けた手法を用いて、効果的に身辺自立を促すように教えていくことが大事です。 一般的に、日常生活の身の回りのことは、家庭内で親が中心となって、子どもに教えて身につけさせます。 しかし、発達障害者の場合、普通通りの教え方では正しい方法での行動ができなかったり、そもそも行動自体を覚えなかったりします。そこで、発達障害者のために考案された、より効果的な手法を用いることが重要となります。 もちろん、こうした手法を親自身が覚えて実践することもできますが、専門訓練を受けているわけではないため、確実に効果を出すのは難しいものがあります。そのため、特別支援を行う学校やデイサービス等の社会福祉施設で、より体系的な支援を行う必要があります。 発達障害者は、それぞれに程度や傾向が異なります。まずは障害の状態をしっかりと把握して、どの程度まで認知や適応行動ができるかを客観的に確認します。その上で、どんな行動を身につけられるよう助けるか、目標とプロセスを議論します。言語能力が低い状態であれば、行動に関係する言葉を覚え、実際の行動を結びつけるよう支援していくことになります。 発達障害者が身辺自立できるように支援するには、前述の通り、まずは障害の状態を正確に把握することから始めないといけません。そのため、客観的な判定ができるアセスメントをすることが求められます。 発達障害者支援施設を利用する場合、アセスメント実施後に計画を立て、支援をスタートすることになります。このアセスメントをするためにはいくつかのツールがありますが、世界的に認められている「Vineland-II(ヴァインランド2)」というツールがございます。適応行動についての評価をすることが目的のツールで、身辺自立との関係性が深い特徴があります。 Vineland-IIは、主に4つの領域に分けてスコア化をしていきます。中でも、日常生活スキル領域では、明確に身辺自立についての能力を判定する項目が存在します。支援計画を策定する際に、この項目を特に注目して議論することができます。同時に、コミュニケーション能力や運動スキルなどについての評価を、日常生活の行動をするのに支障となっている点について理解を深めることも求められます。 身辺自立は、毎日の生活を送るための欠かせない行動です。また、子どもたちにとっては人生の中でも何かを習得する、初期段階にあたる学習行動です。身辺自立をしっかりと学び、自らのものとすることができれば、その後、社会生活を広げるためのさらなる学習を正常に進められる可能性が高くなりますので、適切な方法で実践していくことが重要となってくるのです。