2019.07.09
自閉スペクトラム症がもたらす困難は、子供から大人まで問題の現れ方は様々でも、大きな三つの特性によって引き起こされるものです。こちらでは、それぞれのライフステージにおいて、自閉スペクトラム症と向き合うためのポイントをお話していきたいと思います。 本人や保護者を取り巻く環境がどのように変わり、それぞれにどのような選択肢があるのか、親御さんや保護者などの周囲の人たちはどのように関わっていけばいいのかを、ライフステージごとに細かく見ていきましょう。 生まれた子供の成長を見守っていく過程で、親御さんや保護者のなかには、「何か他の子と違うのでは?」「なぜかうちの子は育てづらい」と感じ、子育てやしつけ方に不安を覚える方々がいらっしゃいます。 そうした方々のぼんやりとした不安が、「自閉スペクトラム症」という具体的な名称へと辿り着くのは、例えば健診で成長の遅れを指摘されたときであったり、幼稚園や保育園での集団生活に子供が馴染めていないという報告を聞かされたときであったりするでしょう。 わずかな不安だったとしても、下記のような専門機関へと相談してみましょう。とりわけ、乳幼児期は相談窓口が充実していますので、まずは身近な機関に相談してみてみるのもいいでしょう。 早くから専門機関に相談、または実際に診察してもらうことで、もし障害が発覚した場合でも、今後の支援のあり方や計画をじっくりと考えることができます。子供が小さいうちにまわりが特性を理解しサポートすることで、社会生活上の困難をより効果的に軽減することができる場合もあります。 ◆保健所、保健センター 就学前の子供の育児に関して相談することができます。乳幼児の健康不安を保健師に相談することもできますし、子育てに関する相談も受け付けてくれます。医療や療育の専門機関に紹介してもらうことも可能です。 ◆子育て支援センター 地域の家庭に対する育児支援を目的として、子育てをする家庭の支援活動を行っています。自治体、NPO法人、企業など、運営する母体は様々です。専門家による育児相談を受け付けている場合もあるので、地域の施設に連絡して確認してみましょう。 ◆児童相談所、児童相談センター 18歳未満の子供の総合的な相談窓口です。本人や家庭はもちろん、学校の先生や地域住民でも相談することができます。自閉スペクトラム症を含む発達障害についての相談もできますし、検査や診断を行うこともできます。療育手帳の交付や専門機関への紹介も行っています。 ◆児童家庭支援センター 地域の子供に関するさまざまな問題に関して相談を受け付けています。子供、家庭、地域住民からの相談に応じて、助言や指導を行います。児童相談所を補完する役割があり、関係する施設への連絡調整も行っています。 ◆療育センター、子ども発達支援センター、リハビリテーションセンター 実際に療育を行っている施設に相談してみるのもいいでしょう。自閉スペクトラム症を含む発達障害の専門家がいますので、今後の子供との関わり方や療育の進め方なども含めて話を聞くことができ、実際の療育の様子を見学できる場合もあります。 ◆発達障害者支援センター 発達障害を抱えた人たちへの支援を総合的に行うことを目的としています。発達障害のある幼児から成人までを対象として、相談の受付や専門機関の紹介、就労支援などを行っています。各都道府県に一か所以上あり、電話での相談も可能です。 ◆保育所、幼稚園 子供が通っている保育所や幼稚園の保育者に相談してみるのもいいでしょう。親子にとって身近な存在ですし、気軽に相談できるという点はメリットでしょう。保育所や幼稚園によっては、地域の親子を支援する取り組みを行っているところもあります。 ◆医療機関 発達障害を専門的に診ることができるのは、児童精神科や小児神経科です。子供の発達に詳しいクリニックでもいいでしょう。ただ、自閉スペクトラム症を含む発達障害を専門的に診る病院は、残念ながらまだまだ少ないのが現状です。 乳幼児期における子供との関わり方について、是非実行してほしい項目を簡単にご紹介します。ポイントを意識しながら子供と接することで、発達に好ましい影響を与えることができます。 自閉スペクトラム症を抱える子供は、叱られると「できない」と思い込んでしまいがちで、自分に自信を失ってしまう場合もあります。意識的に「褒める」機会をたくさん作ってあげることが大切になります。 療育方法の一つであるABAでも、「好ましい行動」を褒めることで、子供のできることを増やしていきます。簡単なことでも、とにかく褒めることを意識しましょう。失敗しても、感情的に叱ったり、グチグチ叱責し続けるのは避けましょう。できるだけ、焦らずに、子供の成長をじっくりと見守ってあげてください。 自閉スペクトラム症では、手先の操作に問題があったり、身体の動かし方がきごちなかったりする場合があります。これは、受け取った感覚刺激に対して、脳が適切な処理を行えていないために起こります。つまり、子供がわざとやっているわけではありません。 ですから、たとえ日常生活に必要とされる行動(手洗い、うがい、排せつ、着替えなど)がうまくできなかったとしても、子供が悪いわけではありません。できるだけ叱らず、うまくできるように手伝ってあげたり、手順を「見える化」して子供に分かりやすく示してあげたりして、子供を応援してあげてください。 たくさん褒められることが子供の自信に繋がり、自尊心の確立を促します。これはとても大切なことです。というのも、自尊心を失った子供は何事にも消極的になりがちで、療育にも参加したがらなくなります。治療が遅れれば、更なる生活上の問題に直面することになり、それがまた自信の喪失へと結び付いてしまうからです。 こうした悪循環に陥らないために、子供に積極的にお手伝いをさせるというのも非常に有効です。簡単な仕事を子供に任せ、できたら必ず「ありがとう」を伝えます。感謝されたり褒められたりした体験が、子供の自信に繋がっていきます。 自閉スペクトラム症を抱えた子供の中には、「人」に対する関心が薄く、一方で「もの」に対して関心が向きやすいタイプもめずらしくありません。このため、たとえ家族であっても、嬉しさや楽しさを共有するのが難しくなる子供もいます。 ですが、人との交流は子供の成長にとって不可欠なものです。人との関わりが言葉の発達にも繋がっていきます。ですから、誰かとともに過ごす時間はとても楽しいものなんだと、子供に感じてもらうことは非常に大切です。 療育方法の一つであるRDIでは、親がガイド役となり、子供に対人関係の築き方を学ばせていきます。同じように、親御さんや保護者との触れ合いを通じ、子供に楽しい時間を共有することの素晴らしさを伝えてあげましょう。 「人」に関心を向けてくれない子供にこれを伝えるのはたしかに難しいことです。ですが、ゆっくり焦らず、子供が楽しいと思えることから始めてみましょう。子供の好きなものや遊びを共有したり、「楽しいね」と口に出して伝えてあげたりすることで、子供が自然と「楽しい」と感じられる時間を作ってください。 近年は、発達障害に関する理解が進んだこともあり、支援を充実させた保育所や幼稚園も増えてきています。もちろん、方針や特徴はそれぞれに異なっていますので、一概にどこがいいとは言えません。 実際に受けられる支援も、保育所や幼稚園によってさまざまです。地域の保育所や幼稚園がどのようなところかをきちんと確認し、子供が安心できるような環境を選んであげましょう。 自閉スペクトラム症と診断されている場合、加配制度によって専任のスタッフがつく可能性が高くなります。また、その子供の発達に合わせた独自の保育計画を作ってくれるところもあります。 繰り返しになりますが、自閉スペクトラム症を抱えた子供たちの発達状況は、それぞれに異なります。ですから、就学先の選択に関しても、その子供の発達状況に合わせて適切な就学先を決める、ということになります。 ただ、そうは言っても、実際にどこに就学すればいいのかを考えると、不安に思う親御さんや保護者の方も多いことでしょう。そうした家庭のために、各自治体が行っている「就学相談」というものがあります。就学相談は、障害の有無に関係なく、どなたでも受けることができます。 一般的な流れでは、入学前年の春に各自治体の窓口に申込を行い、その後相談を開始します。 心理職や元校長先生などの相談員が面談を行い、行動観察や発達検査などを通じて子供の状況を把握します。子供が通う保育所や幼稚園にて訪問観察も行います。その後、就学先の候補を絞りながら、実際に学校見学に行きます。 面談や行動観察、検査結果などを総合的に判断し、専門家によって就学先が検討されます。検討結果は保護者に伝えられ、最終的には保護者が就学先を決めます。 特別支援教育とは、それぞれの子供の発達状況にあわせた環境や教育体制の整備を目的とした取り組みです。特別支援学校や特別支援学級のみならず、通常の学級でも障害を抱えていたり、特別な配慮が必要とされたりする子供たちの支援をより充実させることを目指しています。 自閉スペクトラム症を抱えていても、通常の学級に通う子供もたくさんいます。ただ、より手厚い支援が必要な場合には、下記のような選択肢もあります。 特別支援学校とは、自閉スペクトラム症を含む発達障害はもちろん、そのほか心身に障害を抱えた子供や大病を患っている子供が通うための学校です。日々の学校生活において特別な支援が必要になる子供が対象になっており、生活上の自立ができるための知識や能力を身に付けることを目指します。 特別支援学級は、通常学級での学習が難しい子供を対象とし、通常の小学校内に置かれています。1クラス8人までの少人数に対して複数名の担任がついて指導し、子供それぞれの発達状況に適した教育を目指します。特別支援学級に在籍しながら、一部の教科を通常学級で学ぶ場合もあります。 発達障害による困難のあらわれ方は子供によって多様です。ですから、通常学級に通うのか、特別支援学校や特別支援学級に通うべきかという質問に対しては、個々に検討していくしかありません。 その他の選択肢として、通級指導教室や特別支援教室というものがあります。通常学級にて学習しながら、週に何時間かだけ通級指導教室や特別支援教室に移動して、それぞれの障害に応じた特別な指導を受けます。
就学相談において「通常学級」と判定された子供が利用します。その子供の発達状況に合わせた個別的な支援や指導を、通級指導教室や特別支援教室で受けることになります。自治体によって、名称や指導内容が異