2021.04.16
発達障害にはグレーゾーンがあることが知られています。グレーゾーンは診断が難しく、療育の対象として見落とされるケースもあり、本来は改善支援が必要なのに受けられないという危険性も指摘されています。
そこでこの記事では、グレーゾーンについて、基礎知識を解説したうえで、有効な療育方法と支援方法についてもご紹介します。
1.グレーゾーンとは?
発達障害の子どもには明確な知能の遅れがあるわけではなく、症状の種類や程度もさまざまです。そのため、一般の子どもとの判別が難しい場合があり、はっきりと診断できない中間的な位置づけをグレーゾーンと呼んでいます。
ある物ごとにこだわりが強かったり、特定の分野を苦手にすることなどは誰にでもあることで、その意味でグレーゾーンとは、一般の人にも当てはまるものかもしれません。
1.1発達障害の分類
グレーゾーンについて知るためには、発達障害について理解しておく必要があります。まずは主な発達障害の種類と特徴についてまとめてみましょう。
1)自閉症スペクトラム(ASD)
社会的なコミュニケーションをとることが苦手で、特定の物ごとに強いこだわりを持つような症状を、総合的に自閉症スペクトラムと呼びます。自閉症の傾向が強く、同じ行動を繰り返したり、周囲のわずかな変化に対して強い拒絶反応を見せたりするという、特徴的な症状が多く現れます。
「多動性」「衝動性」「不注意さ」の3つに代表される発達障害で、落ち着いてじっとしていることができず、自分の欲求が満たされないときには物にあたるなどの症状が見られます。また、集中力を持続することも苦手で、やるべき課題を仕上げられないことも問題になります。
学習障害は知能的な問題ではなく、文字を読んだり書いたり、算数の計算をするなどの特定の能力にだけ著しい遅れが見られる状態です。一般的な学力不足とは異なり、かなり明確な症状が現れるという特徴があります。
これらの症状以外にも、協調障害や精神遅滞などの分類がありますが、後述するように、発達障害の症状との線引きが非常に難しい状態がグレーゾーンだといえます。
1.2原因
発達障害の原因については、遺伝的要素が強く関わっていると考えられており、脳の一部に機能的な異常がある可能性も指摘されていますが、明らかな原因は未だにわかっていません。
2.主な症状
幼稚園や小学校でも、落ち着きがない子どもや友だちと付き合うことが苦手な子どもは当たり前にいます。そうした子どもたちが、すぐに発達障害を疑われることはありません。しかし、周囲の大人から見て際立った行動が多いと感じられるときが、いわゆるグレーゾーンの可能性が高いと考えられます。
グレーゾーンは、そのままにしておくと発達障害に移行するという性質のものではなく、発達障害の前段階ではないのです。発達障害の可能性もあれば、そうではない可能性もある、その中間点に位置すると考えればわかりやすいでしょう。
グレーゾーンで注意しなければならないことは、二次的障害を招くリスクがあることです。発達障害として周囲から認識されていないと、学校では落ち着きがないなどと頻繁に注意されることになります。また、友だちからも誤解を受けやすく、集団内で孤立してしまうこともあります。
こうした状況が日常的になり、しかも相談できる相手が誰もいないと、徐々に不登校・ひきこもり・うつ、などの二次的障害を引き起こしてしまうのです。自分自身が評価されないことから、モチベーションも失われ、学校の成績も低下するかもしれません。
3.療育・支援が必要
グレーゾーンにある子どもに対しては、基本的に発達障害の子どもと同様の接し方が必要になるでしょう。障害の可能性があるという段階だとしても、周囲が意識的に療育と支援を行えば、発症を未然に防ぐことや症状を改善することができるかもしれません。
このときに周囲が意識すべきことは、主に以下の4つといわれています。
・子どもが得意なことや他の子どもと違った点をほめる
・苦手なことを無理に練習させない
・難しいことは周囲の大人に相談させる
・自己肯定感を高められるような状況をつくる
グレーゾーンの子どもたちの意欲をそいでしまい、本人の個性を否定してしまうと、二次的障害に進んでしまう可能性があります。療育と支援の場で必要なのは、子どもが自分自身を肯定的に見ることができ、困ったときには周囲の大人に相談できる環境を整えることです。
オンラインでできる個別療育もあります。
グレーゾーンとしての特徴は、多かれ少なかれほとんどの人に見られるものかもしれません。誰にでも苦手なことや特に強くこだわりを持つ対象があり、性格的に落ち着きがない人も当たり前にいるため、見分けがつかないこともあります。
しかし、グレーゾーンの子どもたちに対しては、接し方を誤ると二次的障害につながる危険性があります。それを防ぐためにも、発達障害が疑われるような症状がちょっとでも見えたら、周囲の大人が意識して適切な接し方をする必要があるでしょう。