【発達障がい支援】適応指導教室とは?詳しく解説 | ソーシャルスキルトレーニングVR

2021.04.30

全国で16万人を超える不登校の児童生徒。文部科学省はさまざまな支援を試みていますが、未だ増加傾向にあると言われています。子どもたちが不登校になった際に、行き先の候補として、各自治体が設置している適応指導教室(教育支援センター)が挙げられます。

「適応指導教室」の呼称は古くから使われていますが、「学校や社会に適応出来ていない」差別観念を与えるため批判も多く、現在では「教育支援センター」と呼ばれる事が一般的で、ブリッジスクール、さくら教室、など独自の名称をつけている自治体も多くみられます。

適応指導教室とは

適応指導教室とは、在籍する学校に何らかの理由で登校出来ず長期欠席が続いている児童生徒が、通うことを選択出来る教育支援機関です。

学籍のある学校とは別の場所に設置されていることが多く、国公立、私立を問わず、地区のさまざまな子どもたちを受け入れています。適応指導教室では個別の学習支援、社会体験、音楽・スポーツ活動など、学校の授業とは違った形態が主であり、ここに参加することで学校への出席として扱われます。

また、適応指導教室への出欠、活動内容、活動の様子などは定期的に在籍校や教育委員会に報告され、本人の状況を見ながら学校への復帰や社会復帰を目指します。

適応指導教室の対象者

適応指導教室の対象者は、自身の在籍校に何らかの理由で長期間登校出来ない、いわゆる不登校の児童生徒です。

令和元年5月13日に文部科学省が公表した「教育支援センター(適応指導教室)に関する実態調査」によると、全国の約63%の自治体に適応指導教室が設置され、おおよそ小学生4,000名、中学生16,000名、高校生140名の不登校児童生徒が適応指導教室に在籍しています。

同調査によると、そのうち「学校に行きたくても行けないタイプ(不安や情緒混乱)」と「人間関係によるタイプ(対人関係)」はそれぞれ17%を超えており、対して「学校に行きたくないタイプ(無気力)」は4%と、学校に行く意欲は示しながらも、さまざまな事情で登校出来ない児童生徒が多いことが伺えます。

適応指導教室の指導内容・時間

適応指導教室の職員は、教育職系職員、退職教職員、行政系職員、社会福祉・心理系職員を主として構成されています。指導内容は各自治体に任せられていますが、学校のように授業形式で時間割を組んでいる教室は30%程度で、多くの教室が個別の学習支援を行なっています。社会体験(職場体験)、自然体験、スポーツ・芸術も多く行われ、学習面での遅れをサポートし学校復帰を目指すだけではなく、社会の一員としての適応も見据えています。

適応指導教室は週5日、終日の運営を行なっている所がほとんどですが、午前のみ、午後のみ、土曜日の受け入れ体制の所もあります。児童生徒は指導や支援に合わせ教室に通いますが、通った日数はすべて指導要録上の出席扱いになり、その先進学する際、大切になってくるでしょう。

適応指導教室のメリット・デメリット

不登校児童生徒にとって拠り所や居場所となり得る適応指導教室ですが、メリット・デメリットはどんな点なのでしょうか。

適応指導教室のメリット

学校に通えない子どもたちにとって適応指導教室は、自分の拠り所、居場所となり得ます。自宅に一人きりで引きこもるのではなく、同じような困難を抱えた児童生徒と触れ合うことは、孤独感を解消し精神的にも良い影響を与えるでしょう。

適応指導教室は民間のフリースクールなどと違い、在籍校や教育委員会と密な連携がとられています。月に1回程度、本人の出席状況、学習・活動内容、教室での様子などが知らされ、スクールカウンセラーとの相談、復帰に向けた話し合いなども行われるので、本人が希望したときの学校復帰がスムーズであるという利点が大きいです。また、在籍校の行事の観覧など、少しずつでも学校に関わっていける点も本人に負担が少ないメリットがあります。

適応指導教室のデメリット

個人に寄り添い、個別の支援・指導を行なってくれる適応指導教室は、児童生徒の拠り所になります。

一方で、心地の良い状況に慣れ、また、在籍校から長期間離れることにより学校復帰が難しくなるケースも見られます。本来は短期間の在籍で学校復帰を目指すはずが、前述の文部科学省の調査によると、在籍児童生徒のうち50%以上が6ケ月以上適応指導教室に在籍しています。

特に中学生は73%が6ケ月以上の在籍で、中には3年間のほとんどを適応指導教室で過ごし、卒業していく生徒もいます。在籍校への復帰率は、小学校42%、中学校35%、高校43%と、どの世代でも復帰が出来ない児童生徒の割合が上回ります。

また、適応指導教室には教育や心理分野の専門知識を持った者を配置することが必須でありながら、その数は常に不足しています。個別の指導が必要であるにも関わらず、現在は子ども10人に対し1人の教員が対応しているケースもあり、非常勤職員や学生ボランティアに頼らざるを得ない困難な状況が伺えます。

まとめ

適応指導教室の大きな目的は「学校への復帰」ですが、同時に「社会への適応」も目指しています。適応指導教室が大切な居場所となる一方で、本来の目的が見失われることのないような支援が今後も望まれます。

また、適応指導教室での指導が適切なものであっても、帰るべき学校でのいじめ、教員との関係などの問題が解決されない限り、同じ事の繰り返しが予想されます。生徒本人だけの問題と捉えず、受け入れる学校側も当事者意識を持ち、改善の努力をすることが求められるでしょう。

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