【発達障がい支援】ADHD(注意欠如、多動症)の支援、療育について解説 | ソーシャルスキルトレーニングVR

2021.04.30

ADHDは発達障害の一種で、近年は大人になってから悩む人も多く、仕事や対人関係で問題になるケースが増えています。しかし、多くの場合は小児期から発症し、適切な療養や支援を行えば改善するといわれています。

この記事ではADHDの症状や原因を紹介したうえで、改善するための方法についても検証します。身近な問題として悩むことの多いADHDについて、知識を深めるきっかけになると嬉しいです。

1.ADHD(注意欠如、多動症)とは

注意欠陥・多動性障害などとも呼ばれる「ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)」は、年齢にふさわしくない「多動性」「衝動性」「不注意さ」が持続的に見られる症状です。

1.1主な症状

最初に主なADHDの症状から確認していきます。
多動性として現れるのは、落ち着いてじっと座っていられなかったり、常に手足を動かしたり何かに触ったりする症状です。学校の授業中に席を離れることは典型的なケースです。

衝動性の症状は、相手に合わせて話すことができず、多弁であることや、自分の欲求が満たされないと物に当たったり大声を出したりすることです。順番を待てないことや、他人の邪魔をすることなども症状の一つです。

不注意さで見られる症状は、宿題や課題を期限内に仕上げられないことや、忘れ物が多いことなど、学校の勉強に直結するケースが代表的です。集中力の持続ができないため、気が散ってしまい、現在やるべき課題に手がつかないこともあります。

ADHDも他の発達障害に多く見られるように、詳細な原因が解明されていません。ただし、先天的に脳機能に異常がある可能性が指摘されています。その一つが大脳の前頭前野をつかさどる機能の異常です。前頭前野は脳の最前面にあり、大脳の約30%を占める部分で、主に思考・判断・情緒などの人間らしい精神活動に関わっています。

前頭前野に異常があると、周囲に対して無関心になったり、抽象的な思考ができなくなったりするほか、うつ状態になるケースもあります。また、自己抑制やコミュニケーション能力に問題が生じることもあり、結果的にADHDの症状が発症すると考えられています。

さらに、脳内の神経伝達物質の不足もADHDの原因の一つとされています。簡単にいうと、私たちの体内にある神経細胞は、シナプスという構造を通して神経伝達物質をやりとりしています。この仕組みが正常に働かないことが、ADHDの原因として考えられているのです。

2.ADHD(注意欠如、多動症)の療育、支援方法

一般的にADHDの診断には「ADHD-RS(ADHD評価基準)」という診断テストが利用されます。そのほかにも脳波検査・血液検査・CT検査などの生理学的な診断が行われることもあります。その結果ADHDの疑いがある場合には、療育や支援が必要になるでしょう。

ADHDの療育(治療)方法としては、現在心理療法と薬物療法との2種類が行われています。まず心理療法では、主に医療機関で診断とカウンセリングを受け、日常的に取り組めることから行動の改善を行います。

さらに、心理療法にはアプローチの一つにADHDプログラムがあります。心理療法士の指導のもと、ADHDの症状を緩和、改善させる様々な活動を継続的に行う方法です。具体的には定期的に施設に通い、運動やゲーム、手作業などを通じてADHDの症状を抑えながら、徐々に解消することを目指します。

一方の薬物療法では、神経伝達物質の働きを活性化させる薬として、現在「コンサータ」と「ストラテラ」、「インチュニブ」という3種類が使用されています。それぞれに働きかける神経伝達物質が異なりますが、効果が高く安全性にも優れているといわれています。

症状によっては抗不安薬や抗うつ薬、そして睡眠薬などを併用するケースもあります。いずれの場合も症状によって薬の組み合わせなどを変える必要があるので、医療機関で長期的に治療する必要があるでしょう。

3.ADHDの子どもとの接し方

ADHDの子どもの保護者または支援者に対しては、日常的に療育ができるように、厚生労働省や自治体が中心になり、ペアレントトレーニングやペアレントプログラムを実施しています。この取り組みは、ADHDの子どもの周辺関係者を対象としたもので、子どもとの接し方が学べると同時に体験した本人も前向きになるなど、様々なメリットがあります。

ADHDの子どもと接する場合には、それが本人の責任によるものではなく、1つの疾患に関わる症状であることを周囲が認識する必要があります。本人の行動を責めてしまうと、それがストレスになり症状の改善を遅らせてしまうでしょう。

周囲の人は、なるべくストレスを感じさせないようにしながら、スポーツや遊びなどで気分転換を図り、何ごとも前向きに受け止めてあげることが大切です。

4.ADHDには周囲の理解が必要

ADHDは疾患として理解されない場合もあり、そんなときに本人や保護者は非常につらい思いを味わいます。昔からさまざまな呼び方をされてきた通り、ADHDには多くの異なった症状があります。周囲の人がそれらの症状を正しく認識することが、ADHDの療育と支援には欠かせません。

また、現在はうつ病やパニック障害のように、ADHDにも安全な薬物治療法が確立しつつあります。薬と聞いてネガティブに考えず、前向きな気持ちで医療機関に相談してみることも、試してみる価値があるでしょう。

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