2019.08.01
放課後等デイサービスとは、障害を抱えていたり発達に特性が認められたりする子供たちのために提供される社会福祉事業です。2012年、児童福祉法の改正によって放課後等デイサービスが創設されて以降、多数の事業所が誕生しています。 放課後等デイサービスは、児童福祉法にもとづいて行政から指定を受けた事業者によって運営されます。放課後や長期休暇などに、障害を抱えた子供たちの居場所を提供し、学習や生活のサポート、余暇支援などを行います。また、地域社会との交流を促進する機会も提供しているところもあります。 児童福祉法においては、「放課後等デイサービスとは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く。)に就学している障害児につき、授業の終了後又は休業日に児童発達支援センターその他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与すること」と規定されています。 ※児童福祉法(第六条の二の二) 放課後等デイサービスは、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害などを抱える子供たちが対象です。主に6歳から18歳までの就学している子供たちが利用できます。 放課後等デイサービスは障害を抱えた子供が対象ですが、障害者手帳※を持っていなくても、受給者証の提示で利用が認められる場合もあります。受給者証の取得基準については各自治体に確認しましょう。 ※身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の三つがある。詳しくは「療育手帳」の項を参照 放課後等デイサービスの利用には、月ごとの回数制限があります。利用者全員に画一的な回数制限が定められているわけではなく、利用の上限回数は利用する子供それぞれによって変わります。 障害を抱えた子供の状況、家族や保護者の状況、家庭環境、利用意向などから審査され、利用回数の上限が受給者証の発行時に決められます。上限回数の範囲内で、子供に適したサービス利用を考える必要があります。それぞれの状況や希望にあわせて、複数の施設を組み合わせて利用するのが一般的です。 放課後等デイサービスの利用は障害児通所給付費の対象になっています。受給者証を取得することで国と自治体から9割の給付があるため、利用者は原則、1割負担でサービスを受けることができます。負担上限月額もあり、世帯収入によって上限額が設定させています。それぞれ自治体によって異なり、また、そのほかに独自の助成金があるところもありますので、地域の自治体に確認してみるといいでしょう。 0歳から6歳までの未就学児の場合は、放課後等デイサービスではなく、「児童発達支援」と呼ばれるサービスを利用することになります。日常生活の基本動作をはじめ、集団生活へ適応するための訓練などを継続的に支援する施設です。 2015年に通知された厚生労働省によるガイドラインでは、放課後等デイサービスには下記のような三つの役割が期待されています。 ①子どもの最善の利益の尊重 ②共生社会の実現に向けた後方支援 ③保護者支援 放課後等デイサービスは、支援を必要とする障害を抱えた子供たちに対して、学校や家庭などとは違った時間や空間を提供し、そこで関わる人たちとの交流を促進します。また、そうした体験を通じながら、それぞれの子供の状況に応じた発達支援を行うことで、子供の最善の利益の保障と健全な育成を図ることが期待されています。 障害を抱えた子供たちの社会への参加を促すためには、集団生活における学びや成長が非常に大切です。こうした経験を子供たちに保障するために、専門的な知識や経験にもとづいて支援を行うことこそ、「共生社会の実現に向けた後方支援」の目的です。 このような視点から、子供たちが地域において健全に発達していけるよう、障害児を支援する専門機関としてサポートすることが放課後等デイサービスの事業展開には求められています。 放課後等デイサービスには、障害を抱える子供たちの生活にとって最も重要な家庭に対する支援も期待されています。家族や保護者に対する社会的支援の一つとして、放課後等デイサービスは位置付けられているのです。ガイドラインに基づく「保護者支援」のあり方は、大きく分けて下記の三つです。 ①障害を抱えた子供の育て方に関する悩みなどの相談を受け付けること ②子供の育ちを支える力をつけるためのペアレントトレーニングなど通じ、家庭内での養育等をサポートしながら子供の成長を支援すること ③子供のケアを一時的に代行することで家族や保護者の時間を保障すること これによって、家族や保護者が子供たちと向き合うゆとりと自信を回復すること
<放課後等デイサービスが提供するサービスはさまざま>
放課後等デイサービスが提供するサービスはさまざまで、施設によって異なります。学童保育のように自由に過ごす時間が比較的多い施設もあれば、楽器や美術、体操など特定の科目に特化したプログラムを提供している施設もあります。学習塾のようなところもあれば、習い事の教室のようなところもあります。 専門的な療育に特化した施設もあり、ソーシャルスキル・トレーニングなども含め、それぞれの子供の状況に合わせた個別の療育プログラムを提供しているところもありますし、集団療育を行っているところもあります。 どんなサービスを提供しているのかは、地域の放課後等デイサービスに確認してください。子供の状況や利用目的に照らして利用する施設を選びましょう。
放課後の活動は子供の発達にとって非常に重要です。というのも、放課後における友人たちとの「遊び」のなかで、子供たちは大人になるためのさまざまな経験を積むことができるからです。 友人たちとの「遊び」を通じて、仲良く遊ぶためにはルールを守る必要があること、待ち合わせなどの約束はきちんと守らなければならないことなどを子供たちは学んでいきます。時にはケンカをし、そして仲直りをして、他人との関係性の築き方を学習します。さまざまなことにチャレンジするなかで、子供の主体性は育まれ、状況に応じた対応力を獲得し、延いては社会で生活していくための基礎的な能力を身に付けていくのです。 誰と、どこで、何をして、どのように遊ぶのかといった、放課後活動における子供自身の自由な選択の経験が、大人になってからの自己決定の力を養います。放課後活動の「遊び」を通して、子供たちが将来において主体的で自分らしい生活を送るための基盤を作っていくことができます。 「主体的に行動する」という経験が乏しいと、子供の興味の幅は広がりにくくなりますし、それが大人になってからの生活の広がりにも影響する場合があります。というのも、子供の頃から自由に遊ぶ機会を得られることで、なにかに関心を持つ機会も自然と多くなるからです。興味の対象が広がることは子供の主体性にも結び付きやすく、自分で考えて判断する能力を育み、それが日々の生活意欲の向上にもつながっていくのです。 以上のように、放課後活動は、大人になるためのさまざまな体験を子供たちに積ませるうえで、非常に大切な役割を持っています。そうした意味で、自閉スペクトラム症を含む障害のある子供たちにとって、「放課後等デイサービス」を利用することの意義は大変大きなものになります。 子供が放課後活動を行うことは、その家族にとっても有意義なことです。子供がどこにも行かず、だれとも遊ばずにいつも家に一人きりという状況は、家族や保護者の方々にとって心配なものです。 そうした意味で、子供が放課後に活動する機会が確保されていることは、家族や保護者の方々にとっての安心感にもつながります。安心感は心のゆとりにつながり、子供としっかりと向き合うことができるようになるのです。 また、学校とは違った保護者の方々との交流が広がったり、同じような悩みを抱えていた先輩の保護者に相談できたりするなどの利点もあります。障害を抱えた子供たちの家族や保護者が、地域のなかでネットワークを築く機会としても、放課後等デイサービスは大きな役割を持っています。 子供が放課後活動に向かうことで、家族や保護者に時間の余裕が生まれるという利点もあります。「ほっと一息入れる」時間を作ることができ、それが子育てに対する自信や子供と向き合う際のゆとりを生んでくれます。 「一息入れる」ことや休息の時間をとることは、家族や保護者にとって非常に大切なことです。こうした休息は、専門的に「レスパイト」と呼ばれており、家族や保護者のレスパイト・ケアも放課後等デイサービスに期待される役割の一つなのです。 ①自治体に相談 実際に放課後等デイサービスを利用するためには、まずは地方自治体の福祉担当窓口や障害児相談支援事業所などに相談してみましょう。受給者証の取得基準や申請手順は自治体によって異なりますので、地域の自治体に確認してください。 ②施設の見学 利用を考えている事業所を見学し、相談します。実際に体験させてくれるところもありますので、施設に確認してみましょう。 ③障害児支援利用計画案の作成 申請に必要な障害児支援利用計画案の作成を、相談支援事業所に依頼します。セルフプランとしてご家庭で作成することも可能です。 ④自治体に申請書を提出 地方自治体の福祉担当窓口に、障害児通所給付費支給申請書と障害児支援利用計画案を含む必要書類を提出します。あわせて障害者手帳の提示が必要になります。持っていない場合には、窓口に対応を確認してください。 ⑤利用要件の調査・審査 自治体の支給相談窓口によって、受給者証を発行するための調査が行われます。面接や訪問調査などが行われた後、給付の可否に関する審査が行われます。月ごとの施設の利用回数の上限などもここで決定されます。決定までには数カ月かかる場合もあります。 ⑥受給者証の交付 審査の結果、受給者証の交付が認められた場合、自治体から受給者証を受け取ります。窓口での受け取りのほか、郵送が可能な場合もあります。 ⑦障害児支援利用計画の作成 受給者証の内容に基づいて、相談支援事業所に障害児支援利用計画を作成してもらいます。 ⑧サービス利用の開始 利用を希望する事業所に、受給者証と障害児支援利用計画を提出して契約手続きを行えば、サービスの利用を開始できます。契約に必要なものは、事前に事業所に確認しておきましょう。