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2019.8.5

ソーシャルスキル・トレーニング(SST)〜定義、役割〜

<SSTは、社会生活を円滑に送るための社会生活技能の訓練>

ソーシャルスキル・トレーニング(社会生活技能訓練,Social Skill Training:SST)は、社会生活を送るうえで必要になるスキル(技能)を学び、障害によって引き起こされうる困難を軽減するための訓練のひとつです。SSTは、適切な日常生活習慣や対人行動を獲得することを目的として行われます。

挨拶や会話の仕方などに始まり、対人関係を含む日常生活を円滑にすることを目指しています。SSTを重ねることで、自閉症スペクトラム障害による困り感や対人不安を改善していくことができます。

 

●ソーシャルスキルとは、状況に応じて適切な行動がとれる能力

では、ソーシャルスキル(社会生活技能)とは、どんなものを指しているのでしょうか。その定義は研究者によってさまざまですが、WHOは「日常生活の中で出会う様々な問題や課題に、自分で、創造的でしかも効果のある対処ができる能力」と定義しています。一般的には、「対人関係のなかで、状況に応じた適切な対応を行う能力」として知られています。

しかし、いつでも、どこでも、だれに対しても通用する「万能な対応・行動」などありません。同じ行動でも、その相手や場所、タイミングなどによって、相手が受ける印象が変わってくる可能性があります。ですから、ソーシャルスキルにおいて重要な目標は、「状況に応じて、適切な行動がとれること」です。

 

●同じ行動でも、相手やその状況、場所、文化などによって印象が変わる

例えば「相手の意見に反した自分の意見を述べる」という場合を考えてみましょう。親しい間柄での和やかな会話や建設的な議論の場であれば、自分の意見を述べても肯定的に受け入れられることが多いでしょう。しかし、謝罪をしているときや叱られている場面では、自分の意見を主張することが相手の感情を逆撫でしてしまう可能性があります。

対話をしている相手が平静なのか、落ち込んでいるのか、怒っているのか、感情の状態によっても、相手の受け止め方が変わります。こちらの発した言葉が同じものでも、相手の状況によって、与える印象は異なるのです。

相手の受け止め方は、文化や慣習などにも大きく左右されます。例えば、「キスをする」という行為。日本では一般的に恋人同士のあいだでしか行いませんが、海外の国によっては、家族や親しい友人同士の挨拶として頻繁に行われます。

 

●ソーシャルスキルは、行動パターンの知識+状況の分析力

このように、同じ言葉や行動でも、その状況によって、受けとめられ方が変わってくるのです。つまり、ソーシャルスキルが高い人というのは、いつ、どこで、どんな行動が最適なのかを理解している人、ということになります。けれども、ソーシャルスキルの高さは、対人関係において自分がとりうる行動のパターンが豊富だということだけで計れるものではありません。もちろん、行動パターンを数多く知っていることは重要です。少ない行動のパターンしか知らなければ、日常のあらゆる場面に対応していくのは非常に困難です。

しかし、いくら豊富な行動パターンを知っていても、それを適切に選択できなければ意味がありません。ですからソーシャルスキルには、適切な行動のパターンを知っているということだけでなく、今がどんな状況なのかを周囲の細かなヒントから見極めて分析する能力も含まれているのです。

 

●二次障害のリスクを軽減するためにSSTは重要

ソーシャルスキルは、「対人関係において、自分の希望を叶えることができる能力」とも言えます。良好な人間関係を築くこと、恋人を作ったり結婚したりすること、仕事で望んだ結果を出すことなどは、いずれも本人のソーシャルスキルにより、その実現の可能性が大きく左右されるかもしれません。

ソーシャルスキルに課題があると、希望を叶えることが難しくなり、本人は自信をなくしたり、周囲から孤立したりする恐れもあり、二次障害へとつながる危険性を高めてしまいます。ですから、SSTなどを用いソーシャルスキルを向上させることは、二次障害の予防のためにも有効であると考えられています。

 

●ソーシャルスキルは学習によって会得できる

対人行動(※他者に対して示す行動)は、いくつかのソーシャルスキルの適切な組み合わせによって構成されています。相手や状況を見極めながら、自分が知っている行動を適切に実行することで、対人関係をより円滑に発展させることができます。

「ソーシャルスキル=社会生活技能」という用語が一般的に使われていますが、「技能」という言葉が用いられているのには理由があります。つまり、ソーシャルスキルとは「技能」であり、学習によって会得できるものである、ということです。

 

●対人関係は、経験や訓練で修正できる

本人が望む対人関係のために選択する行動は、その人の性格や素質よりも、学習によって習得されていく部分が非常に大きいと考えられています。つまり、対人関係がなかなかうまくいかないケースは、まだ「技能」の習得が不十分である可能性が高いのです。

表情や感情表現などは、その人が本来持っている性格によるところが大きいように思えるかもしれません。しかし、心理学では、多くの対人行動は学習によって習得することができると言われています。もし、対人関係においてどうしてもうまくいかないことがあるとしたら、経験や訓練によって十分に修正することができる、ということです。

 

●適切な対人行動がとれない三つの要因

社会生活における対人関係で望んだ結果を得られない場合の原因は、以下の三つに求められます。

①求められる適切な行動のレパートリーを知らない
②求められる適切な行動が、適切なタイミングで用いられない
③不適切な行動によって、適切な行動が隠されてしまっている

つまり、行動のレパートリーを増やし、適切なタイミングで適切な行動をとることができるようになれば、良好な対人関係を築くことができるようになります。その技術を学ぶことが、SSTの目的なのです。

 

●障害のある人はソーシャルスキルを学ぶ機会が限られてしまいがち

たとえば集団が苦手だったり、友だちが少なかったり、年齢に応じた社会的な場に参加する機会が少ない場合、自然にソーシャルスキルを身に付ける機会が限られてしまうことがあります。

とりわけ、自閉スペクトラム症などの障害がある場合、障害の特性により、ソーシャルスキルを身につける機会が妨げられる悪循環に陥ってしまうリスクがあります。ソーシャルスキルを実践する機会が少なくなることで、人付き合いに対する自信をなくしたり、不安を抱いてしまったりすることもあり、社会的な孤立を選ぶようになる危険もあるので注意が必要です。

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