2021.07.06
「障害者総合支援法」が改正されたことで、放課後等デイサービスや就労移行施設など、障がい者をサポートするための施設運営が活発になっています。今後もニーズの増加によって、こうした施設の利用が促進されるでしょう。
その一方で、施設の運営にはさまざまな課題があることも事実です。この記事では施設運営上の集客に関する課題とその対策、そして効率的な運営方法について解説します。
【放課後等デイサービス・就労移行施設】集客の適正について
放課後等デイサービス/就労移行施設のような障がい者向け施設は、主に医療法人やNPO法人、そして民間企業によって運営されています。そのため運営を継続するうえでは、ある程度の利益を確保する必要があります。
現在全国にある放課後等デイサービス/就労移行施設は、事業所数と利用者数がともに増加傾向を維持しています。しかし、事業所ごとに経営状況は異なり、中には台所事情がかなり苦しい事業所もあるようです。その原因の1つが施設の稼働率で、これを適性レベルにまで上げることが大きな課題になっています。
施設のキャパシティが限られている
放課後等デイサービス/就労移行施設の稼働率は、以下の計算式により算出されます。
(1ヵ月ののべ利用者数)÷(1日の利用定員 × 1ヵ月の営業日数)
例えば、
定員が30名の施設で1ヵ月の営業日数が25日のべ利用者数が375人だった場合は稼働率は50%となります。
375 ÷(30×25)= 375 ÷ 750 = 0.5
多くの施設では、すでにキャパシティが限られているため、単純に利用者数を増やして稼働率を上げることは難しいかもしれません。しかし、施設を安定的に運営するためには、放課後等デイサービス/就労移行施設が積極的に集客をすることが必要です。
費用対効果が良いとされる集客手法
放課後等デイサービス/就労移行施設にとっても、一般的なビジネスと同様に集客のためのアプローチは重要です。しかも規模が小さい施設では、できるだけ手間やコストをかけずに集客しなければなりません。ここで、その効率的な方法を検証してみましょう。
集客するうえで最初に考えるべきことは、地域に根ざした施設としての営業です。近隣地域の情報を収集・分析して、営業をかけるターゲットを明確にする必要があるでしょう。また、地域内に競合する施設があるときは、独自の取り組みなどの明確な特徴をアピールすることも効果的です。
集客のため営業をかけるターゲットについては、まずは地道な人脈づくりから始めましょう。直接の集客につながらなくても、医療機関、地域包括支援センター、地域のコミュニティーなどに顔を出し、普段から集客のベースになるネットワークをつくっておくわけです。
就職後の定着率を維持することが重要
放課後等デイサービス/就労移行施設には、施設の利用者が就職した場合、その後の定着率を高める取り組みも求められています。これには国からの補助金制度が改訂されたことも関わっています。
施設に支払われる基本報酬が変わる
特に就労移行施設にとっての大きな課題ですが、障害者総合支援法の改正によって、今までは一律だった基本報酬が、就職後6ヵ月定着率を基準とする成果型に変更されました。算定基準になる就労定着率は、次の計算式で算出されます。
・一般型の場合
(前年度と前々年度で就職後6ヵ月以上定着した人数)÷(前年度の利用定員数+ 前々年度の利用定員数)
国から施設に支払われる基本報酬が、上記の定着率を基準に算出されることになったため、各施設には今まで以上に、就職した利用者の定着率を高める取り組みが求められます。
定着率の現状
障害者職業総合センターが公表した「障害者の就職状況等に関する調査研究」によれば、就労移行施設などで就労定着支援を受けた人は、1年後の定着率が73.2%と高い水準を維持しています。一方で支援を受けていない人の場合、定着率は52.6%と大幅に低くなっています。
定着率に差がある理由
障がい者が離職してしまう理由については、最初のうちは仕事になじめないことが大きいようで、さらに仕事を続けていると、今度は身体的な問題から職を離れてしまうケースが多いようです。
施設での支援により定着率が高くなるのは、就労前に十分な職業訓練を受けていたことと、就職後にも継続的なサポートがあったことなどが理由として考えられます。
施設の質を上げることも重要
就労後の定着率によって、施設に入ってくる報酬が変わることは、放課後等デイサービス/就労移行施設には定着率を高める努力が求められるということです。この取り組みが施設の運営状況に直接結びつくので、各施設ともに障がい者の職場定着率を上げる工夫をしなければなりません。
それと同時に、施設そのものの質を高める努力も必要です。障がい者に対して適切なサポートができ、質の高い就労支援が可能な施設にすることが、今後の大きな課題になるでしょう。